レイジング・ブル

2002年12月23日 18時01分59秒
1980年公開のアメリカ映画で、ロバート・デ・ニーロ主演、マーティン・スコセッシ監督だ。デ・ニーロはこの映画でアカデミー賞主演男優賞を受賞している。まさに、彼のための彼による映画と言ってよい。その存在感は、ものすごいものです。

レイジング(raging)は、激怒したとか怒り狂ったという意味だ。ブル(bull)は、去勢していない雄牛という意味だ。つまり、怒れる雄牛というニックネームで呼ばれたジェイク・ラモッタが、モデルである。1941年にデビューし54年に引退するまでに、106戦30KO、83勝の戦績を残した元ミドル級世界チャンピオンだ。

このペースで試合をするのは、驚異的だ。まさに戦う雄牛である。ニューヨークのブロンクスに生まれ、少年時代から悪になり、少年院に入れられる。そこで、神父に出会って更生し、プロボクサーになる。1941年にプロになり、1943年には当時の最強と言われたシュガー・レイ・ロビンソンを破る。

しかし、その激しい気性ゆえに私生活では恵まれず、離婚を2回経験している。一回目はプロになって勝ちだした頃だ。映画では戦闘シーンなど、ほとんど白黒だ。だが、若くて綺麗なビッキー(キャシー・モリアーティ)と結婚し、弟のジョーイ(ジョー・ペシ)も家庭を持つ頃だけ、カラー映像になる。一番幸せな時だ。ただ、ボクシングをすることだけに集中できたのだから。それ以外は全編モノクロである。この対比が、すばらしい。

だが、回りがボクシングだけに集中することを許さない。この辺が、この物語の悲しい所です。我々の援助がなければ、世界タイトル戦はできないと組織のものから話を持ちかけられる。1947年マディソン・スクエアガーデンで、ビリー・フォックス戦に負けろと言われる。弟も抱きこまれるのだから始末が悪い。だが、フォックスのパンチは弱く全く効かない。そこで、打たせるだけ打たせて、試合を放棄してTKO負けになる。この後の後悔する様子が、すごい迫真の演技である。まさに役者とは、こういうものだ。

当然問題になり出場停止になってしまう。2年後の1949年デトロイトでの世界チャンピオン戦に10回TKO勝ちをする。しかし、もうその頃には八百長に手を貸したという心の闇から、徐々に精神的に追い詰められて行く。これは、ある意味で無理もないことだと思う。そして、誰も信じられなくなってしまう。美しい妻への嫉妬に怒り狂い、弟を殴ったりする。

引退後に経営したクラブで、未成年者に客を紹介したとして逮捕されたり、八百長の件で証人喚問を受けたりと、彼の人生には浮き沈みが絶えなかった。刑務所に入れられて、独房の壁を殴り続けるシーンは、鬼気迫るものがある。

映画では冒頭出番を待つジェイク・ラモッタが、セリフを練習しているシーンから始まる。そして、ラストもそのシーンで終わる。現役時代の体型とブロードウェイの舞台であろう楽屋で、練習している体型は全くの別人である。なんと25kgも太ったというのだ。さすがです。一度は見ておくべき映画です。



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