ローサのぬくもり

2005年4月4日 20時20分
1999年公開のスペイン映画で、ベルリン映画祭やブリュッセル国際映画祭、東京国際映画祭で主要部門を受賞し、スペインのゴヤ賞主要5部門を受賞した当時話題になった作品だ。わては全く知らなかったのだが、今回BSで放送されたものを録画して見た。ペニト・サンプラノという新人監督の作品だが、その内容は実に芳醇で味わい豊かな人間ドラマになっている。すばらしい傑作だ。

ローサ(マリア・ガリアナ)は、気難しい夫(パコ・デ・オスカ)が手術のために都会の病院に入院したので、看病のために親元を離れていたマリア(アナ・フェエルナンデス)の部屋に泊めてもらう。都会のことは全くわからないので、マリアにバスの乗り方や電話の取次ぎを近くのバーに頼んだりして世話を焼く。マリアは、父の暴力が耐えられず都会に逃げるように出てきた過去を持っていた。父の反対で大学に行けなかったので、清掃人の仕事をして生計を立てていた。でも、生活は苦しく、35歳の現在になっても独身ですさんだ生活をしていた。良く行くバーでは、マスターを騙して酒を盗んだり金をくすねたりしていた。

でも、母のローサはそんなマリアの生活態度を責めることなく、花を買ってきたり料理をしたりと世話を焼きだした。そんな母の態度が、マリアをいっそういらだたせる原因になってしまう。妊娠検査薬で調べると、妊娠がわかる。男のところに相談に行くと、中絶するように言うだけだった。そんなことを母に相談できるわけもなく、マリアはますます苛立っていく。母のローサは、同じアパートに住むアキレスという犬を飼っている老人(カルロス・アルヴァレス・ナヴォア)と知り合い、話をしたり料理を作ってやったりする。

ローサは、日中夫の世話をしに病院に行き夕方になると娘の部屋に戻るという生活を繰り返す。その中でも、娘のために部屋を綺麗にしたりベストを編んだりする。その態度は、同じアパートに住む老人にも変わりなかった。夫に会うと、「男の臭いがする」と言われるが、ローサは黙って何も言わない。これは、おそらく長年の夫とのやり取りで学んだやり過ごし方だと考えられる。その後も、ローサは下痢でズボンを汚してしまったアパートの老人を風呂に入れて体を洗ってあげる。母とその老人は、少しの友人以上の関係に成りかけた。

やがて、夫が退院できるまでに回復するとローサは、いっしょに田舎に帰っていく。取り残されたマリアは、同じアパートに住む母と仲良しだった老人に妊娠したという悩みを打ち明ける。すると、その老人は中絶には絶対反対だとある提案をする。その提案が、実にすばらしい解決方法で心温まるものだ。そんな解決方法を考え付いたのは、母ローサの人柄の賜物だった。赤ん坊を抱いたマリアが、父と母の墓をその老人といっしょに訪ねるラストシーンは、涙が出るほど美しい。



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