愛の流刑地

2007年01月22日 22時10分
渡辺淳一原作の同名小説を、豊川悦司と寺島しのぶ主演で映画化した大人向けのラブストーリーだ。わての好きな寺島しのぶは、「剣客商売」の着物を着た剣の腕もありおしとやかな女性だ。でも、彼女のフィルムグラフィーを見ると、オールランドに何でもこなす女優になってきた。裸になるのをためらわなくなった女優は、もう怖いものはないだろう。この映画では、貞淑な妻が不倫に陥り性の喜びに目覚めて、愛のために殉ずる女性を演じた。わては、彼女の役に没頭した演技に圧倒された。また、実の母・富司純子も少ない演技時間で存在感を見せている。

冒頭から男女のセックスシーンが、展開される。入江冬香(寺島しのぶ)が村尾菊治(豊川悦司)の上に乗り、絶頂に上り詰めようとしている。女は男に、「愛しているなら殺してくれ」と頼む。今までに何回もその最中に首を絞めてきてので、男は首に手を掛ける。でも、その日は何かが違っていた。男が呼びかけても、女は二度と目を覚まさない。何時間かの葛藤の末、男は警察に電話して殺人罪で逮捕される。

映画はそれから、裁判の進行と平行して随所に回想シーンを組み込んで進行する。脚本的には、よくできていて破綻はない。検察官として織部美雪(長谷川京子)が、露出の大きな格好で法廷に出るのは不自然だ。愛の営みは別にどう描こうと構わないが、裁判のシーンはあくまでもリアルな表現にこだわって欲しかった。冬香は、流行作家村尾菊治の大ファンで著書を何度も読み直しているほどだった。京都の取材旅行の時、元出版社勤務の魚住祥子(浅田美代子)の紹介で二人は出会う。

京都に夫や子供三人と住んでいる冬香は、時間が取れないので数時間しか会うことができない。東京に住む村尾は、新幹線で2時間程度のデートをして日帰りで帰ることから始める。何回も会ううちに、二人は深い関係になっていく。夫徹(仲村トオル)の横浜転勤で、すぐに会うことができるようになると一週間に2回・3回と会うようになる。その結果、冬香は始めてセックスの喜びに目覚めてしまう。夫の徹は仕事が忙しく、家庭も子供も妻も構っていることができない。

愛を深めれば深めるほど、二人の関係は矛盾をはらんでいく。夫と子供三人を裏切り続けて、平静を保てるのは普通の人間ではできない。この矛盾から冬香は、愛に殉ずることを選ぶ。そんな女に振り回される男は、まるでピエロだ。特に裁判のシーンで、男が「愛をこんなところで裁くことはできない。あなたは、ほんとうに人を愛したことがあるのですか」と叫ぶ。確かに、人は人を裁くことができない。そんなことを思わせるほど、寺島しのぶの演技はすごかった。


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