オーシャンズ

「WATARIDORI」の製作者でフランスのTV局を中心にしたチームが、壮大な海を4年間に渡ってロケーションしたドキュメンタリー映画だ。70億円の製作費が掛かっているので、撮影方法にも色々な工夫がある。魚雷型カメラや15km/hで進む水中スクーターや小型ヘリコプターにカメラを載せたりして、迫力満点の映像が展開される。一つ一つの映像は非常に出来がいいのだが、全体としてまとめてみると盛り上がりに欠ける。

イルカ、ザトウクジラ、アゴヒゲアザラシの親子、34mのシロナガスクジラ、20mのマッコウクジラ、14mのジンベイザメ、10mのシャチ、8mのオニイトマキエイ、ホオジロザメなど実に多くの海洋生物がフィルムに収められている。この映画には、海洋生物センサス(CoML)という2000年から始まった国際的な研究プロジェクトの成果が反映されている。人工衛星から撮影した海の成分分析の映像が少し使われていて、興味深く思った。

10年間の調査で実に5300種の新種の生物が発見されて、2210万件のデータが蓄積された。ジャック・ペランとジャック・クルーゾ監督のこのドキュメンタリーにも、その成果が生かされている。ということなら、海の生物の危機に絞って蓄積したほうがよかった。絶滅してしまった生物がいるというし、絶滅の危機に瀕している生物がいるのはしっかりと伝わった。

その危機をもっと訴えるのなら、数種類の海洋生物に絞ってその実態を描くとか物語性を持たせたらどうだったのか。それとも、北極のホッキョクグマなどの生態をじっくりと描くのも一つの方法だ。また、河川から海に流入する人工的な物質の影響を徹底して描くとかもよかったと思う。ちなみに、一般公開の順番は、日本・フランス・ドイツ・アメリカとなっている。日本版のナレーターは宮沢りえで、主題歌は平原綾香と藤澤ノリマサの「Sailing my life」だ。
追記では、この映画の間違いについて書く。

まず、サメのひれを切り取って胴体を捨てるシーンは、ロボットを使っている。また、ふかひれの漁業をしている様子をテレビで見たことがあるが、サメを全部水揚げする。そして、陸上で丁寧にひれの部分を切り取り、そのほかの部分は水産加工品に回される。決して、あのような船上で捨てることはあり得ない。

また、イルカ漁も出ていた。イルカ漁や鯨漁は、日本の伝統漁業だ。欧米が新大陸発見で鯨を油の原料として取っていた以前から、日本では食料としてイルカやクジラを食べていた。それは、いわばアラスカの先住民が食料にするために海獣たちを取るのと同じである。水産資源の保持で規制が必要なのはわかるが、一方的な規制はよくないだろう。



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