ソラニン

浅野いにお原作の同名漫画を、初監督の三木孝浩で主演宮崎あおいと高良健吾主演で映画化した。大学を卒業して2年目というと、青春の真っ盛りで自由奔放なエネルギーを何にぶつけたらいいかわからない年齢だ。そんな主人公が音楽への夢を追い続けて、輝く瞬間を見事に映像にしている。でも、青春映画として見た方がよく、音楽的な要素が高くない。その理由として音楽が若者たちの夢として扱われているのだけど、宮崎あおいの歌をフルで見せないからだ。

原作者が1980年生まれであり、漫画の発表が2005年なのでその時代なのだと思う。登場人物がしているゲームがインベーダーに似ているので、少し古い設定かもしれない。いずれにしても、バブル崩壊後の新卒の学生たちで、自分の夢を目指せるのはほんの一握りだろう。この映画に登場する井上芽衣子(宮崎あおい)はしっかりと就職して、OL2年目だ。いっしょに暮らしている種田成男(高良健吾)は音楽の夢を諦めきれないので、アルバイトをしている。他の登場人物も、夢と現実のギャップに苦しんでいる。

ギターとボーカルの種田、ベースの加藤(近藤洋一)は大学6年生であり、ドラムのビリー(桐谷健太)は実家の薬局を手伝っている。加藤の彼女小谷アイ(伊藤歩)は芽衣子の友人であり、全員が同じ大学の軽音楽部のメンバーだ。少なくても主人公である芽衣子と種田の恋人同士の営みを、しっかりと描かないといけないだろう。それらしいシーンはあるが、大河ドラマではないのだ。

肝心の夢と現実の狭間でゆれて苦しむ様子は、しっかりと描かれている。芽衣子が嫌々続けているOLを簡単にやめてしまうのは、いかにも若者らしい。会社をやめて、種田の夢を応援しようと一度チャンスに掛けてみてと芽衣子が薦める。種田は、アルバイトに熱が入らず首になる。三人のメンバーは懸命に練習して、デモCDを作りレコード会社やライブハウスに送る。

たった1回デモCDを送っただけで、それが成功に結びつくとは思えない。でも、彼らは若い。種田は食べるために、再び出直そうとする。そこに、悲劇が待っていた。勤めていた会社に頭を下げて、5日間も徹夜していたのだ。バイクで自宅に帰る途中、信号の見落としでなくなってしまう。若さゆえの悲劇だろう。

その後、芽衣子は種田のギターを引き取って、練習を開始する。バンドのメンバーを招集して、本格的に練習をする様子が丁寧に描かれている。特にわてが感心したのは、エレキギターを弦のチューニングだけで練習する場面だ。アンプにつなげると大きな音が出るけど、練習は小さな音でやる。その練習シーンが、しっかりと音が出ている。これで、宮崎あおいのボーカルシーンの出来がよければ、すごい映画になった。

ドラマ部分だけでも、見ごたえがある。また、ボーカルシーンの彼女の芝居は、すばらしい。吹き替えにしなかった勇気を買いたい。



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この記事へのコメント
TB有難うございました。
学生から社会人になっていく過程での
将来の不安、不透明な未来、そして葛藤
大人から見ればわがままなだけかもしれないけど
こんな想いに駆られる人は多いと思います。
宮崎あおいちゃんのラストシーンの歌とギター
上手い、下手でなく感情が伝わってきました。
ただ、残念なのは最後の「ソラニン」
フルで見たかった。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
Posted by シムウナ at 2010年04月04日 23:26
シムウナさん、こちらこそTBありがとうございました。
やっぱり、最後の「ソラニン」をフルで見たいですね。見せない理由はないと思うのだけど。
ゴロゴロ。
Posted by とらちゃん at 2010年04月05日 09:31
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