のだめカンタービレ最終楽章後編

昨年公開された前編に続く、「のだめカンタービレ最終楽章」の後編だ。二ノ宮知子原作の同名コミックの劇場版で、TVドラマから続いてきたお話の締めくくりになる。のだめ(上野樹里)と千秋(玉木宏)の恋愛模様を中心に、クラシック音楽の指揮者とピアニストとして切磋琢磨する二人のドラマが見ごたえを増している。といっても、後編だけでもしっかりと一つの作品になっている感想を受けて、二つの作品に分けた理由が希薄だと思った。でも、ショパン、ブラームス、ベートーヴェン、ラヴェル、モーツァルトの楽曲を聴きながら登場人物のドラマを見ていると不思議に満足した。

特に、ラン・ランが、のだめのレッスン曲から幼稚園の先生のピアノ曲まで見事に演奏している楽曲の出来はすばらしい。とても同じピアニストが弾いているとは思えないほど、シーンごとに曲調を変えている。のだめが竹中直人ふんするシュトレーゼマンと協演するショパンの「ピアノ協奏曲第1番ホ短調」は、上野樹里の演技もすばらしい。さらに、テルミンという空中の手の動作だけでテンポや音階を出す楽器と、パーカションによる演奏が興味深い。孫Rui(山田優)と千秋が協演するラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調第一楽章」も、よかった。

最新のシネコンの音響設備は、スクリーンに関係なくどこで見ても臨場感がたっぷりだ。登場人物それぞれの恋模様をしっかり描いているし、のだめの基礎レッスンの様子も手抜きせず描いている。さらにロケ地をパリとプラハで行っているので、どうしても上映時間が長い。中盤でだれ気味になる物語は、名曲を聞き惚れているうちに関係なくなった。これは、ストーリーを音楽がカバーしてしまったのだと思う。

普段クラシックの生演奏を聞く経験がないものにとって、こういう映画は貴重だ。のだめがシュトレーゼマンとの協演で燃え尽きてしまい、目標を失ってしまう。燃え尽き症候群というわけで、そこから抜け出すのは並大抵ではない。先生の言うことを素直に聞いていれば、そんな状態にはならないだろう。でも、先生の言うことを聞きすぎていても、スケールの大きな音楽家になれるとは限らない。のだめがもがき苦しむ姿を見ていたら、映画としてのまとまりがなくても、なんだかどうでもいいと思ってしまった。ストーリーの展開が少しゆっくりでも、音楽の道で食っていく覚悟ができなければ仕方ない。

最後に使用された曲を紹介する。「テルミンとパーカッションのための小品」、ショパン「ピアノソナタ第3番ロ短調」、「もじゃもじゃ組曲」より「もじゃもじゃの森」、ブラームス「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」、ベートーヴェン「ピアノソナタ第31番変イ長調」、フランス民謡「アヴィニヨンの橋の上で」、ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調第一楽章」、ショパン「ピアノ協奏曲第1番ホ短調」、ベートーヴェン「ピアノソナタ第8番ハ短調(悲愴)」、モーツァルト「2台のピアノのためのソナタニ長調」。



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この記事へのコメント
とらちゃんさん、こんにちは。
ミスターシネマです。
いつもトラックバックありがとうございます。

僕はドラマ版はほとんど見ておらず、のだめシリーズを見たのは前編からでした。

まあ、面白いと言えば面白いんですが、前編に比べて全体的に雰囲気が重く、「のだめ」ならではのコメディ色が薄かったため、やや物足りなさを感じてしまいましたね…。

個人的には、「これぞ、のだめ!」というギャグシーンをもっと多く盛り込んで欲しかったですね。

ところで、「映画関係」という項目で僕のブログをリンクしているのは非常に嬉しいのですが、実はリンクしているアドレスは無効になっています…。

タイトルは「必見!ミスターシネマの最新映画ネタバレ・批評レビュー!」と変わりありませんが、新しいアドレスはhttp://netabare-review.seesaa.net/ です。

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Posted by ミスターシネマ at 2010年04月26日 14:18
ミスターシネマさん、わざわざコメントありがとうございます。
さっそく変更します。ゴロゴロ。
Posted by とらちゃん at 2010年04月26日 17:15
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