マイレージ、マイライフ

他の地方では3月から公開されたけど、浜松では最近やっと上映されている。アカデミー賞5部門ノミネートの評判のいい作品なので、見逃してはいけないとTOHOシネマズ浜松で見た。

ウォルター・カーンの同名小説を、「JUNO/ジュノ」のジェイソン・ライトマンが監督と共同脚本を担当して映画化した。時代的背景としては映画が公開された時期よりも少し前で、アメリカが経済的に苦境に陥った時期のようだ(IMDB参照)。全米の企業がリストラに躍起になっていたとき、首にする従業員に面接をする専門の会社に勤務している男性が主人公だ。ジョージ・クルーニー演じるリストラ宣告人も、実はそういう会社に勤務している会社員だ。わては、その二律背反の設定が痛快だった。

この映画を見た方の普通の感想は、「空の上に住んでいるような男性が人間関係を見直す展開」に感慨を覚えるというものだろう。でも、わての印象はかなり違う。自分が障がい者であり、この映画の登場人物のような恵まれた環境にないからだ。何十年と勤務した会社を首になったからといって、ホームレスになるようなリストラ対象者はいない。

例外として、もし首になったら自宅の近くの橋の上から身を投げると予告した女性が、ほんとうに自殺するのが自分のことのように思えた。リストラ請負会社に入ったばかりのナタリー・キーナー(アナ・ケンドリック)はショックで退職する。でも、ベテランのライアン(ジョージ・クルーニー)はそ知らぬ顔をして知らぬ存ぜぬを通す。ベテラン社員としては当然の対処方法で、ナタリーも勉強になったことだろう。追記では、人並みの記述を。

1000万マイルを貯めることを人生の目標とするのは、全米で7人しかいないので大変なことだ。おそらく20年くらいかけて達成した飛行距離は、1609.344mが1マイルとして1億6093万キロだ。地球一周が4万キロなので、4023周する。地球と太陽の距離が1億5千万キロと言われているので、その距離を飛行機で飛んだことになる。年間322日間も出張しているライアンだからできることだ。こんなことに人生をかけていては、人間関係を正常に構築するのは無理だ。

生きがいともいえるその出張を廃止する合理化案を提案した新入社員のナタリーは、ライアンにとっては仇敵だ。ところが、パソコンの操作が得意なだけの現代っ子であるナタリーには、リストラ宣告の現場に行けば素人だ。そこで、ナタリーの教育係りにライアンが指名される。それと同じ時期に、ライアンはキャリアウーマンのアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と知り合い都合のいい男女の関係になる。

妹が結婚式を挙げるという事件がきっかけになって、ライアンの心情に波風が立ってくる。そのドラマチックな描き方が、非常にうまい。アレックスの割り切った生き方と比べると、男性は不器用だと思った。長年会社に勤めてリストラにあった男性に、「学生のころアルバイトでやっていた料理人」になる夢をライアンが薦めるシーンがある。これこそ、実際に面談するやり方にこだわる理由だろう。



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