ハナミズキ

ハナミズキ一青窈のヒット曲「ハナミズキ」から脚本を起こして、映画化した作品だ。監督は土井裕秦、脚本は吉田紀子だ。高校時代に出会った男女が、ともに夢を追い続けるうちに別れ別れになり10年の時を経て再びめぐり合うまでを描いている。「君と好きな人が百年続きますように」という歌詞の意味が、そのまま映画のストーリーと合致していてなんとも言えないすがすがしい気持ちになれる。ここに登場する男女は、色々なタイプの人間がいて観客は誰かに共感できる。

主人公の紗枝を演じる新垣結衣も相手の康平役の生田斗真も、高校生から28歳の大人になるまでの過程をよく演じ分けていると思う。最初は推薦で入れるはずだった早稲田に、普通入試で合格するのだから紗枝は優等生だ。康平は水産高校の高校生なので、父のあとをついで猟師になる。高校を卒業すれば遠距離恋愛になることはわかっているので、男女の仲の難しい局面だ。紗枝は東京でどんどん垢抜けていき、得意の英語に磨きをかける。

ところが、康平は水産業の不振で猟師を続けるのが難しくなる。さらに、父健二郎(松重豊)が漁の最中に倒れて亡くなってしまう。東京へ康平が出てきても、どうも高校時代と同じような関係を保てない。紗枝が大学卒業のとき就職に難儀をして、2年後ニューヨークの小さな出版社に在籍していた。アメリカの生活に慣れたころ、紗枝は早稲田大学の先輩で、戦場の子供たちを被写体にしている写真家北見純一(向井理)に再会する。

同級生の結婚式で帰国した紗枝を待っていたのは、漁協の事務をしているリツ子(蓮佛美沙子)と結婚した康平だった。でも、紗枝を見る康平の目は、昔の高校時代に戻っている。こういう場面ではよほど大人になっていないと、気まずい状況が発生する。しばらく実家に滞在した紗枝と康平は、家族に内緒で会う。紗枝はアメリカに行ってしまうけど、康平には酷な家庭事情が待ち受ける。

「君と好きな人が百年続きますように」とは世界の平和を願う言葉だけど、この映画とは相性がいい。ワールドトレードセンターがないニューヨークやカナダの港町でのロケによって、一青窈の歌の世界と映画の内容がシンクロする。ハナミズキの花は、春しか見ることができない。そして、冬にはすべての葉を落としてしまう。でも、新しい年が来ると新芽が芽吹き、鮮やかな花を見ることができる。愛する人も、ハナミズキの幹のようにたくましくそばにいてほしいと願う。




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