オカンの嫁入り

咲乃月音の同名小説を、呉美保監督が映画化した。宮崎あおいと大竹しのぶという演技派女優が、娘と母役を演じている。深夜若い男を連れて帰ってきた母(大竹しのぶ)は、翌朝その男性と結婚すると宣言する。ドタバタ騒動が繰り広げられると思いきや、娘も母もお互いに直接打ち明けられない問題を抱えていた。母の問題はよくある健康上の問題で簡単ではないし、娘の心の問題も母と相談して解決できるものでもない。話が進むうちに徐々にほぐれてくる過程が、深い感動を呼ぶ。

森井陽子(大竹しのぶ)は、夫を妊娠中に亡くし娘月子(宮崎あおい)を立派に育て上げた。大坂の下町に住む母娘は、軒続きの大家上野サク(絵沢萠子)とも家族のような付き合いをしていた。陽子は、自宅近くの村上整形外科に勤めている。院長の村上(國村隼)とも、親しいようだ。でも、映画冒頭で連れてきた金髪の若い男研二(桐谷健太)は、月子の全く知らない人物だった。それを突然プロポーズされたから、結婚すると言われても納得できない。

怒った月子は、大家のサクの部屋で寝泊りする。でも、研二は月子のいない家に寝るわけにはいかないと、縁の下で布団に丸まって夜を過ごす。この状況から、事情を知らないのは月子だけだと予想できる。さらにおかしいのは、20代後半くらいの年齢になる月子が仕事をしている気配がないことだ。月子は、サクや村上に相談するがどうも事情がわからない。家族同然の二人でも知らないということは、深刻な事態だと思う。

ここからがこの映画の肝となる部分だ。母陽子は、健康上の重大な問題を抱えている。ある病気で余命が少ないことが、貧血で倒れて明らかになる。娘を育てることだけを生きがいにしてきた母は、自分の余命が少ないことからやり残したことがあった。それは、娘月子の心の問題で外の世界に出ることができない事態だ。娘が独り立ちしてしっかりと前向きに生きていれば、何も研二と結婚すると言わなくてもいい。

すべてを理解した上で、研二は陽子に結婚を申し込んだ。数ヶ月しか新婚生活ができなくても、いっしょに暮らしたいと思ったのだ。研二も、祖母を亡くしたばかりで天涯孤独の身だった。養子に出されて、祖母とは血のつながりがないのだ。月子は、元同僚からストーカーをされて暴力を振るわれて会社に行けなくなった。それは、電車に乗れないという症状を残していた。なんとか、月子を外の世界に出られるようにして、働く気持ちを起こさせる。

白無垢を着るために、陽子と月子は電車に乗る。そして、母は娘に嫁入り前の花嫁が、「お世話になりました」という口上を言う。本来は、娘が母に言うのが普通だ。でも、この映画ではこの台詞は、母から娘に送られる。大竹しのぶは、どうも体重を減らしてこの役を演じたような気がする。やせこけた母の顔には生気がないが、目から溢れる愛情は枯れることがない。すばらしい女優二人の演技を見て欲しい。



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この記事へのコメント
ほとんど映画とか舞台とか観ない私だけど、TVでちょっと垣間見るだけでも、大竹しのぶって怪優だな~って思います。

野田秀樹とつきあってる頃とか好きじゃなかったけど、こないだオールナイトニッポンGOLDにスペシャルパーソナリティで出てて、とってもおもしろかったよ。
Posted by Yoca at 2010年09月08日 00:34
Yocaさん、彼女はすごいす。
はんぱねえってやつです。
ゴロゴロ。
Posted by とらちゃん at 2010年09月08日 08:56
ほんとにね。
素だとかなり天然っぽいけど、役者としては大成功だね。

そして、お笑いのセンスもあるし、別れちゃったとはいえさんまちゃんと結婚してたっていうのもわかるな~。

IMALUちゃんがデビューした時、親の七光りだと思ってバカにしてたけど、最近結構おもしろくなってきた。

両親の才能を受け継いでほしいものだね。
Posted by Yoca at 2010年09月08日 13:03
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