SP 野望篇

テレビシリーズは、再放送で見て知っていた。フジテレビのドラマからの映画化だ。岡田准一は、ほんとうに格闘技(カリやジークンドー)の達人らしい。ジェイソン・ボーンの登場する例のシリーズや「ボディー・ガード」などのハリウッド映画と比べてはいけないけど、格闘シーンについてはなかなか頑張っている。ところが、リアルな物語の見せ方や脚本のテンポが悔しい出来なのだ。前半の六本木ヒルズなどのロケシーンがよかったので、そのテンポを最後まで続けて欲しかった。

SPというのは、政府要人が街頭演説などをするときに後ろで鋭い目つきをして立っている人たちのことだ。アメリカのシークレットサービスはもちろん武器を常備しているし、レーガン大統領の暗殺未遂事件を防いでいる。日本のこの映画を見ていると、何十年昔のことを物語にしているのかと思ってしまう。そんなことを書いても仕方がないので、この映画の世界観を尊重して以下の文章を書く。

警視庁警備部警護課第四係の井上薫(岡田准一)は、危険をあらかじめ察知できる能力を持っている。子供のときに両親を暴漢に殺されたことが、彼に危険を察知できる能力を身につけさせたのだろう。加えて、格闘技が得意なのでいつも活躍してしまう。冒頭の六本木ヒルズでの大臣警護シーン、ことごとく井上が察知して襲撃者を全員やっつけてしまう。さらに、地下鉄ホームにまで乗り込んでいって犯人を逮捕する。

次の任務は、与党幹事長伊達國雄(香川照之)のお国入りの警護だ。人一倍目つきの鋭い井上は、幹事長の伊達から気味が悪いと言われてしまう。夜になってホテルの一室に集まった面々が、「平和ボケした国民の目を覚ますために革命を起こす」と言っている。その中には、伊達や井上の上司尾形総一郎(堤真一)に、尾形の東大時代の同級生であるらしいキャリア役人が集まっている。どうも、彼らの目的は、わざと要人を標的にしたテロを起こして、戦前のような強い国家権力を作ることなのか、警察や公安が強い権力を持たせることなのだろう。

そんな彼らの仲間になれと、尾形は井上に誘う。「大儀のためには少々の犠牲は仕方がない」というのだ。井上はその申し出を拒否して、「目の前にある命を守ることがSPの役目だ」と言う。まさにその通りである。官房長官田辺晋一(蛍雪次朗)の警護シーンが、ラストのミッションとして描かれる。山本隆文(松尾諭)・石田光男(神尾佑)と最初に負傷して、笹本絵里(真木よう子)はボウガンの矢で動けなくなる。

官房長官と井上(岡田准一)の二人だけになっても、全く応援が来ない。上司の尾形に連絡ができないなら、ほかの部署に連絡しないのだろうか。いくら井上がスーパーSPでも、爆弾を警棒で跳ね返すだろうか。SPの在り方を変えたいというなら、わざわざ要人を襲撃させなくてもいいだろう。政府内部の権力闘争が、こういう派生的事件を生んでいるという設定ならすごくおもしろいけど。続編は、真木よう子が見たいのでたぶん見るのだ。



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