行きずりの街

志水辰夫の同名小説を、阪本順治監督が映画化したサスペンスだ。仲村トオルと小西真奈美が主演で、塾の講師をしている元教師の男性と失踪した教え子が遭遇する事件を描いている。東京都心に校舎を構えている高校は、郊外に移転して大学を併設した総合教育施設への移行を計画していた。その強引な拡大計画の中に、教え子の失踪事件の秘密も含まれていた。強力な権力に立ち向かう一介の塾教師という構図で映画は進む。でも、権力を握る側は薄っぺらい組織だし、それほどの緊迫感がない。どちらかというと、元夫婦の再会のメロドラマという感じがした。

私立高校の国語教師波多野和郎(仲村トオル)は、12年前教え子の手塚雅子(小西真由美)と卒業後に結婚した。ところが、それがスキャンダルになり波多野は学校を追われ、雅子とも離婚して故郷に帰る。その12年後、塾の教え子広瀬ゆかり(南沢奈央)が失踪してしまう。波多野は教え子を探しに上京して、心当たりを探し回る。すぐに行くあてがなくなり、元妻の経営するバー彩に行き着く。元妻の雅子は、一度はいまさら何をしにきたのかと彼を受け入れない。

一旦拒絶するも、揺れ動く女心を小西真由美は好演している。波多野は国語教師でありながら、男女のことになると寡黙で多くを語らない。それが女性から見ると歯がゆくて、憎めない点になっている。俺が間違っていたとしか言わない仲村トオルは、高校卒業したばかりの彼女が人生を掛けていたことをわかっていなかった。塾の生徒だったゆかり(南沢奈央)の捜索先から雨に濡れて雅子のアパートに行くと、二人は結ばれてしまう。

東亜メンテナンスという会社の総務部長中込(窪塚洋介)を中心にした三人組が、波多野の邪魔をする。中込は高校時代ボクシング部にいて、急所を殴り波多野に警告する。窪塚洋介の存在感はなかなかで、おもしろい。でも、この連中のやり方は詰めが甘くて、はがゆい。中途半端な悪なので、ボスの東亜グループ社長の池辺(石橋連司)も生かしきれていない。

高校の教師と生徒が結婚することは、特に珍しいことでない。世間でよくあることだろう。それをスキャンダルにして教師を首にすることは、相当のかたい校風だ。もしくは、学園を我が物にしたい池辺たちにとって、邪魔な存在だったのかもしれない。どうして邪魔だったのか、もっと詳しく掘り下げてくれれば合点ができた。元夫婦の再会と学園の陰謀が、もっと絡み合っていればおもしろい映画になったと思う。

但し、主題歌の「再愛~Love you again」(meg)はとてもいい曲だと思った。
再愛~Love you again~ (DVD付)



同じカテゴリー(2010年映画)の記事
最後の忠臣蔵
最後の忠臣蔵(2010-12-30 00:10)

バーレスク
バーレスク(2010-12-20 22:25)

ノルウェイの森
ノルウェイの森(2010-12-13 22:06)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
行きずりの街
    コメント(0)