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テッド・チャンの短編小説をドゥニー・ヴィルヌーヴ監督が映画化したSF作品だ。ある日突然地球に飛来したエイリアンとの意思疎通を女性言語学者が解明する物語だけど、実は数千年後の地球にいる生物と人類との対話みたいな様相だと思った。最初から人類と敵対しているわけではなく、むしろ助けを求めているらしい。さらに、人類の欲しいものを予測できる能力も持っているようだ。ということで、この映画を見ていると人間の望むことが詳らかにされていくのだ。

地球の12箇所に飛来した巨大な塔のような物体は空中に浮いている。アメリカでは言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)とイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)がリーダーに任命されて、タコみたいなエイリアンとの意思疎通を図る。相手は言葉を発しないけど、図形で意思表示ができる。また、こちらの意思疎通の意図を理解して徐々に会話が成り立っていく。最後は自分の名前や単語の意味などを伝える。

すると、向こう側はこちらの考えていることを理解しようと努力をしてくる。ロシアや中国、ヨーロッパでもプロジェクトが立ち上がり解明が進むけど、国家間の情報共有はできない。というよりも、国家機密扱いにして他国に情報を渡さない。面白いのは相手のことを理解できないからと、中国軍が無理矢理に攻撃をしようと焦ることだろう。国家の風潮を反映してみたいだ。

アメリカのプロジェクト内部でも軍隊と、言語学者の間で考え方の違いが起こり対立する。これはまさに、現代政治の勢力争いの鏡みたいだ。そんな揺れ動く人間の対応に準じて、エイリアンも色々と迷ってしまう。人間が何を求めているのか探りつつも、武器が欲しいのかとも思ってしまうのだ。これは自分たちの心の中を見透かされていると言える。

さらに、物語は時間の概念も飛び越えてみせる。ルイーズの過去に経験したことなのか、未来に起きることなのか色々と飛び越えていくのだ。これは現代の科学の範疇では解明できない哲学的な物語に入って行く。エイリアンが何を人類に求めているのかではなく、人類が何を未来に求めているのかを問われているように思った。こちらが攻撃すればエイリアンはそれに対抗するし、こちらが平和的に対処すれば向こうも会話を続ける。不思議な映画だった。星4個。

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