座頭市 THE LAST

子母沢寛原作の「座頭市」シリーズを、香取慎吾主演で映画化した完結編という位置づけの作品だ。庄内フィルムコミッションの協力で、山奥に人口の村を作り真冬の雪原でロケをした力作だ。「THE LAST」というだけあって、市が最後を迎えてしまう壮絶な物語が展開される。香取慎吾は役になりきって化け物ぶりを熱演している。仲代達也や倍賞千恵子らベテラン脇役陣の余裕がある演技は、経験の違いだと感じた。

冒頭のタネ(石原さとみ)との堅気になろうとする市の逃避行が、なんとか成就するかと思われた。その瞬間、別の流れ者の追っ手にタネが刺されてしまう。この序章ともいう物語が、この映画のあらすじになっている。さんざん戦ってほっとしたところをまさかと思う卑怯者にやられてしまう。不条理きわまる話であって、刀を振り回しての戦いの無意味さを印象付けている。農民代表という役柄の倍賞千恵子が、「私たちは死なないようにひっそりと生きている」と市に言う。それでも戦わないといけない市の悲しさは、よく表現されている。

ぼろぼろになって柳司(反町隆史)に救われた市(香取慎吾)は、ミツ(倍賞千恵子)と五郎(加藤清四郎)の家族といっしょに百姓をすることになる。その村は大山村といい、どうも海が近いようだ。鳥地(岩城晃一)一家がその地方を牛耳っていたが、天道(仲代達也)一家が進出してくる。そして、天道は庄屋の家を襲撃して、その屋敷を本拠地にしている。子分の多い天道一家の勢力の下で、島地一家は文句を言えない。

島地一家の代貸・達治(寺島進)は、市の知り合いのトヨ(工藤夕貴)と夫婦になっていた。大山村の近くには海があり、半農半漁で生活が成り立っていた。うまく役人と農民が協力すると、豊かな村になったことだと思う。ロシアとの貿易などというとんでもない野望を持っている天道は、そんな地の利に目をつけて進出したのだ。役人を抱きこんで、地回りを追いやってその地を支配する。タネを殺した虎治(高岡蒼甫)と十蔵(ARATA)も、天道一家に入り込んでいた。

大山村の人々は、半農半漁でやっと生活ができるほど苦しい生活を送っている。それが、天道の野望によって海岸に大きな船着場を作ることになり、漁業の収入が減ってしまう。「死なないように」細々と生きてきた村人にとって、もはや我慢できない仕打ちだった。柳司の決死の覚悟に、市は捨て駒になっても悪に立ち向かう。香取慎吾は、熱演で迫力満点だ。とくに、賭場でのいかさまを見破るシーンは、すごい。さらに、工藤夕貴の捨て身の演技もいい。加藤清四郎君も、子供店長とは違う味を出していた。

何でも、フランスの配給会社も入っているらしいので、楽しみだ。翌日が映画の日であるにもかかわらず、勝新からのファンの方々がたくさん来られていた。「THE LAST」というのは、この映画の版権を保持している方が”もう最後にしてくれ”という希望されたためだらしい。映画界に大きな影響を与えた作品なので、映画館で体験してほしい。



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