踊る大捜査線THE MOVIE3ヤツらを解放せよ

織田祐二主演の「踊る」シリーズの映画化第三弾だ。前作から7年という間隔があいて、逆に新鮮味が出て作り手の割り切った姿勢がいい。どう割り切ったかというと、警察内部の引越しやら権力闘争に保身と野望などのドロドロしたドラマを笑いに昇華していることだ。何しろ、青島係長の健康診断の思い込み自体を余命短いことにしてしまうのだ。新湾岸署が乗っ取られる事件自体が、コメディとしか見えない。

お台場が開発途上から最先端の都市に進化したために、湾岸署が手狭になる。そこで、最新のセキュリティーシステムを完備した新しい建物に引越しをすることになる。係長に昇進して戻ってきた青島刑事(織田祐二)は、刑事課強行犯係の警部補だが最初の仕事は引越しの責任者だ。その引越しの打ち合わせ会議を事件の捜査対策本部の会議に模して開くのだから、笑ってしまう。引越しといっても署員が関わるのは本人の持ち物だけで、大部分は引っ越し業者が行う。

引越し業者は正規社員が少なくて、臨時雇いのアルバイトが非常に多い。何しろ、警察署一つを3日でそのまま引っ越して稼動させるという早業をするのだ。当然業者ならどこへでも出入り自由となり、拳銃の保管庫にも入れるし警備システムのマニュアルは机の上に置かれたままになる。3アミーゴの署長(北村総一郎)・課長(小野武彦)・副署長(斉藤暁)たちは、おしゃべりをしているだけでどこにでも行けてしまう。

引越し作業中におかしな引越し業者に化けた犯人が、拳銃3丁を盗み警備システムマニュアルを取り変えてしまう。引越しのどさくさにまぎれて全くわからないように、それを成し遂げてしまう。やがて、新しい最新の防犯システムを誇る警察署には半分程度の署員が頑丈な扉で閉じ込められ、盗まれた拳銃を使った連続殺人事件が発生する。さらに、今までに青島刑事の捕まえた凶悪犯の釈放が要求される。

真剣な捜査会議が開かれるけど、真下正義(ユースケサンタマリア)が警察内の女性に名前を聞いて回っていたり自分の出たDVDをプレゼントしたりしている。いかりや長介演じた和久刑事の甥で、和久伸次郎(伊藤淳史)が登場するのは感動的だった。でも、おじさんの残した手帳を捜査員全員が振り回されるのは喜劇だ。小栗旬の鳥飼管理補佐官が本庁と所轄の調整役をするが、それさえも本音と建前の使い分けみたいなものだ。

もうこうなってくると、「踊る大捜査線」祭りみたいなイベントを見せられている感じになって、我々観客はあたかもいっしょに引越し作業をしている気分になった。警察の保護施設に入っている日向真奈美(小泉今日子)が登場してきて、お祭りは絶頂に達する。レクター博士のような凄みあるわけでないので、護送車内で青島刑事と二人きりになる場面はパロディの極みだ。楽しい映画なので、テーマパークに行くような気分で見てほしい。映画の新しい楽しみ方ができたかもしれない。



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