アルゴ

ベン・アフレック監督・製作・主演で、アカデミー賞作品賞を受賞した作品だ。1979年に起きたイランアメリカ大使館占拠事件で、大使館の外に出てしまった外交官6名を救出した事実に基づいて映画化された。カナダ大使公邸に匿われたアメリカ人を架空の映画製作を装ったロケハンで、堂々とテヘラン空港から民間の飛行機で脱出させる。ハラハラドキドキのストーリーで、実際に自分もいっしょにイランを脱出できるかと入り込んでしまった。シュレッダーで裁断した紙を子供がつなぎ合わせて、隠れていたメンバーの顔が判明してからの緊迫感がすごい。

1979年に起きたイラン革命は、バフラヴィー国王(ハーレビ)を追放してイスラム教のホメイニ師を指導者にした政権を樹立したものだ。イランは長い間イギリスの影響下にあったのだけど、第2次世界大戦でアメリカの影響が強くなる。親米路線を取るハーレビ国王に対する反感が強まって、国王がガン治療の名目でアメリカに入国してアメリカ大使館にデモ隊が押し寄せる。イランの警察は見て見ぬふりをして、デモ隊が大使館内に入り占拠する。大使館内にとどまっていれば6名は無事だったかもしれない。でも、大使館内にいたイラン人を逃がす目的もあって、6名が外に出てしまう。どこにも受け入れられなくて、やっと助けてくれたのは、カナダ大使だった。

1979年11月4日に大使館が占拠されて、1980年1月25日まで6名は大使公邸に隠れていた。本国のCIAや国務省ではどうやって救い出すのか、議論が繰り返された。人質奪還の専門家トニー・メンデス(ベン・アフレック)が考え出したのは、偽の映画製作を装って6名を救出する作戦だった。他の案としては、自転車で国境を超えるとか教育関係者にするものもあった。「猿の惑星」の特殊メイクで知られたジョン・チェンバース(ジョン・グッドマン)と、プロデューサーのレスター・シーゲル(アラン・アーキン)に協力を仰ぎ、脚本まで用意して製作記者発表も行う。

実際にハリウッドのスタジオに事務所も置き、電話も引いた。6名がなるのは、カナダ人の監督・脚本家・製作・撮影などの映画スタッフだ。絵コンテも作り、ロケ地を探すという作業(ロケハン)を行う。わざわざ革命の真っ只中にロケハンをするという無謀な計画しか、残っていなかったのだ。メンデスは、単身イランのテヘラン空港に降り立つ。文科省に行ってロケハンの許可をもらい、6名をバザールに連れ出すところまで成功する。でも、大使館の人質の人数と名簿の人数が合わないことがイラン側に判明する。シュレッダーにかけられた短冊のような紙を子供が集めて、一枚の絵にしていく。すると、行方不明の6名の顔が徐々にわかっていく。

一方、アメリカ本国では空港へ向かう前日になって、作戦中止の命令を決める。特殊部隊での突入を優先するというのだ。カーター大統領の再選が危なくなってきたので、強攻策に出るという。メンデスは一旦6名を諦めるが、翌日の朝になってCIA本部に作戦決行を告げる。現場が勝手に決めて動き出したので、失敗するば大使館にいる50人以上の人質の安否も危ない。出国審査の場でのやり取りが、キリキリと緊迫する。全く見事な演出だ。飛行機が国境を越えて、アルコールを出すアナウンスが流れたときの瞬間がいい。

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IMDb(Argo2012)より、
「アルゴ」は、ギリシャ神話のアルゴ探検隊「アルゴ探検隊の大冒険」という物語からとられた。
6名の救出プランは、90%がカナダ大使のケン・テイラーの発案計画で行われたという。カーター元大統領が語っている。
テヘラン空港を飛び立とうとする飛行機をイラン革命防衛隊が追いかけるシーンは、現実ではない。映画の演出だという。

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