武士の献立

和食が世界文化遺産になったタイミングで、この映画が公開されるのはベストだ。加賀藩に実在した包丁侍と江戸屋敷の女中から妻になった女性の波乱万丈の物語をユーモアと忠実に再現された調理シーンで描かれている。この時代に食品偽装などあるはずもなく、料理の味を決めるのは包丁侍の手腕にかかっている。上戸彩と高良健吾、西田敏行のやり取りが面白い。和食を好きな人はますます好きになれる映画だった。

加賀藩江戸屋敷のお貞の方(夏川結衣)の女中である春(上戸彩)は、料理の腕と味覚に優れていた。江戸屋敷で殿様の前で行われた料理方の舟木伝内(西田敏行)が作った隠し味の材料や料理方法を言い当てたために、春は伝内の息子安信(高良健吾)の嫁に来て欲しいと懇願される。一度は断るが、伝内自らがやってきて頭を下げて頼まれて承諾する。さっそく加賀までやってくるが、待っていた安信は長男をなくしたばかりの次男で家を継ぐ決意をしたばかりだった。

さらに、今までは剣に熱中しており包丁の扱いは初心者だった。父の伝内からは息子を一人前の包丁侍にして欲しいと頼まれて、4歳年下の夫に接することになる。簡単に年上の妻の言うことを聞くわけがないので、刺身を切る勝負をする。その勝負で夫に勝った春は、なんとか料理の腕をあげてもらおうと教え始める。里芋の皮も満足にむけなかった安信は、徐々に料理の腕を上げていく。でも、安信には親友で剣術指南役の今井定之進(柄本佑)とその妻佐代(成海璃子)がおり、佐代は昔彼が好きだった女性だった。

安信は佐代のカンザシを密かに持っており、春はそれを見つけてしまう。さらに、加賀藩で実際に起きた加賀騒動をいう内紛に巻き込まれてしまう。6代藩主に引き立てられていた大槻伝蔵(緒形直人)が、前田土佐守直躬(鹿賀丈史)によって流刑に処せられる。大槻派は一掃されてしまい、安信はかろうじて難を逃れていた。親友の今井もお家お取り潰しになる。さらに出家して関係ないはずのお貞の方にまで、影響が及ぶ。幕府は加賀藩のお家騒動に乗じて、付け入ろうとチャンスを伺う。土佐守への復讐を狙っている今井たちの企みを知った春は、夫がその企てに加わらないように刀を持って逃げ出す。

安信は仲間に加われなかった春に怒りをぶつけるが、母(余貴美子)から身を持って止められる。伝内からは、お家が大事なら自分の役目を果たせと一喝される。周辺の藩主たちや幕府の重役たちを招いて、饗応料理会を開催するのが通例になっていた。その場ですばらしい料理を出すことが加賀藩の存続のために必要だった。伝内が倒れたために、息子の安信は春を伴って能登へより良い食材を求めて旅に出ると言い出す。七の膳まである饗応料理は映像で楽しんでほしい。たくましくなった安信がいい。春が最後に女の意地を見せるが、舟木家は幕末まで続いたとわかるので安心だ。

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