クラウド アトラス

デイヴィッド・ミッチェルの同名小説を、「マトリックス」のウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァ監督が映画化した映像叙事詩だ。19世紀から24世紀までの6つの時代を一人の俳優が6役演じることで、輪廻転生や人類の歴史を壮大なスケールで映像にした意欲作だ。誰が誰を演じているかは全部把握できないけど、3時間弱の上映時間を退屈しないで楽しむことができた。それぞれの物語をつなげながら、徐々に終盤に進むという脚本が見事だ。映画という表現手段を芸術的に高めていると思った。

トム・ハンクスとハル・ベリーに、ヒューゴ・ウィーヴィングぐらいわかれば大丈夫だろう。特にヒューゴ・ウィーヴィングは「マトリックス」で、敵役のスミスを演じたのでそのキャラを引き継いでいるのがとても面白い。ヒューゴは女性看護師も演じているので笑ってしまう。男性俳優が女性役で登場するケースがほかにもあるらしいが、よくわからない。

冒頭の導入部で頭に入れておきたいのは、各時代の主要登場人物3名くらいでいいだろう。1849年の南太平洋のある島で弁護士アダム・ユーイング(ジム・スタージェス)は、黒人奴隷オトゥア(デヴィッド・ジャーシー)を航海士として働くのを手助けする。1936年のスコットランドでは、若手作曲家(ベン・ウィショー)が親に勘当されて年老いた名作曲家に弟子入りする。1973年のサンフランシスコでは、女性ジャーナリスト(ハル・ベリー)が原子力発電所の陰謀を暴こうとして命を狙われる。

2012年のロンドンでは、作家のスキャンダルで大金を手に入れた編集者が没落して養老院に入れられて仲間と脱走する。2144年のソオルでは、遺伝子操作で作られたクローン・ソンミ(ペ・ドゥナ)が地下組織に合流して象徴的存在になるまでを描く。2321年のハワイでは、地球が崩壊して細々と生きる羊飼いザックリー(トム・ハンクス)が人食い種族と戦いながら、文明の進んだ地域から来た女性メロニム(ハル・ベリー)と協力して未来への道を探る。

航海日誌が次の時代の作曲家の創作意欲の源になったり、その作曲家の作った「クラウド アトラス六重奏」がジャーナリストの精神的支えになる。ジャーナリストが暴いた巨大企業のスキャンダルで金儲けした編集者は、養老院に入れられて脱走する。環境破壊で資源の亡くなった世界では、遺伝子操作でのクローン人間をリサイクルしていた。その不平等な世界を不当だと訴えた女性は自由の象徴になっている。24世紀になっても自己保身や弱肉強食の世界は変わっていないが、未来を切り開く決断ができるようになっている。

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