ジャンゴ 繋がぜざる者

南北戦争の起きる2年前、テキサス州でドイツ人歯医者の賞金稼ぎが黒人奴隷を救いディープサウス(最南部)であるミシシッピ州の大農園に乗り込んで行くマカロニウエスタンだ。監督のタランティーノの趣味がたっぷりと織り込まれたド派手なアクションになっている。R15なので、残酷な描写が苦手な人は遠慮しておくべきだ。最初の出会いからしっかりと後々のふせんになっている。

綿花のプランテーションはこういう奴隷制度の体制がないと成り立たない。南部の農場主たちの屋敷は軍隊の野営地になる規模だ。奴隷制度を最大限主題として取り上げて、皮肉っているのが痛快なのだ。歯医者キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、西部劇で出てくるドクホリデーみたいだ。しかも医学が盛んなドイツ人という設定が笑ってしまう。さらに有り得ない組み合わせに黒人奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が、相棒になる。

南北戦争勃発前に、黒人が馬に乗ることなど考えられない。だいたいが駅馬車に乗れたのは白人だけだ。だから、最初に二人が行き着いた街の酒場でビールを飲んでいる場所に町中の人間が鉄砲を持って乗り込んでくるのが普通なのだ。そんな大ピンチにも関わらず、シュルツは焦ることがない。保安官だと名乗った人間が偽名を使い、お尋ね者だと証明する。そして、自分たちが賞金稼ぎだと信じ込ませる。こう物事がうまく運べば、映画にならない。

シュルツがジャンゴを相棒に格上げして、奴隷の売買商人もターゲットになる。その延長線上に、ミシシッピ州の農場主カルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の経営する農場に囚われている妻ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を救い出す作戦が浮上する。ドイツの伝説ジークフリードが説明される。お姫様を救い出す勇者がジャンゴというわけだ。黒人奴隷ジャンゴが奴隷商人を演じているうちに、黒人解放の物語に変遷していくのが見事なのだ。黒人同士を素手で戦わせて殺し合うのは、まるで南北戦争だ。

農場主の目的は金儲けだけ、黒人執事スティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)の立場はいつの間にか黒人支配、ドイツ人シュルツはジャンゴの助手になっていた。妻ブルームヒルダのピンチのたびに腰の銃に手を当てているようでは、執事に知り合いだとばれてしまう。農場に入った段階から南北戦争になっているように思った。ダイナマイトで屋敷を爆破して、ほんとうの戦争が終わったという意味だろう。それは、何年後だったのか。

トラックバックは下記アドレスをコピー&ペーストしてお使いください。
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/61-76648773



同じカテゴリー(2013年映画)の記事
僕等がいた前篇
僕等がいた前篇(2018-11-06 16:28)

永遠の0
永遠の0(2013-12-31 23:33)

武士の献立
武士の献立(2013-12-18 23:46)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
ジャンゴ 繋がぜざる者
    コメント(0)