藁の楯 わらのたて

「十三人の刺客」の三池崇史監督が、木内一裕の同名小説を映画化した。台湾の高速鉄道700T型や開通前の高速道路を使ってロケまでしているけど、間延びした脚本のおかげでなんとも締まらない映画になってしまった。お金を掛けて大々的に製作しているのはわかるけど、凶悪犯を護送する映画はハリウッドで散々作られた題材だ。時間の経過とともに、リアリティーがだんだんなくなっていくので見ているのが辛くなった。

東京で小学生の女の子を惨殺した容疑者・清丸国秀(藤原竜也)は、被害者の祖父で大富豪の蜷川隆興(山崎努)から10億円の懸賞金をかけられる。福岡の潜伏先で仲間に殺されそうになって、自首した清丸を東京まで護送しないといけなくなる。全国紙に「この男を殺したら10億円差し上げます」という広告を出されたら、日本中の人間がその気になる。

警察から高速道路を使って運ぶのに、パトカーや護送車を何台も連ねていく。でも、ニトログリセリンを積んだタンクローリーが逆走してきたり、機動隊の中からも清丸を狙う人間が出てくる。警視庁のSP銘苅一基(大沢たかお)や白岩篤子(松嶋菜々子)、捜査一課の奥村武(岸谷五朗)と神箸正貴(永山絢斗)、福岡県警の関谷賢示(伊武雅刀)の5人が護衛を担当する。空路がだめになったので、新幹線を使うことになる。

新幹線のどの車両に乗っているかまでわかるハイテクの仕組みは、なかなかおもしろかった。新幹線の中で襲撃が起きるくらいまでは、緊迫感があった。静岡県で新幹線が使えなくなってからの現実感のなさが、困ってしまう。なぜ誰とも遭遇しないのか。車でやってくる人間が都合よすぎる。

SPの二人をわざと選んだという話が出てくるけど、そのエピソードがあとに全く生かされていない。直属の上司も公安の人間も蜷川の手が回っているはずなのに、それも物語に反映されていない。個人タクシーの登場もあまりにも突飛で不自然だ。護衛をする警官がなぜ防弾チョッキを着ないのか。「十三人の刺客」と同じ監督が作ったとは思えない。

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