図書館戦争

有川浩原作の同名小説を、岡田准一・榮倉奈々主演で映画化された現代の焚書坑儒とそれに抵抗する人間を描いた作品だ。昭和63年が終わり正化という年号が始まる設定で、悪書を駆逐するメディア良化隊と図書館の蔵書を守る図書隊の戦いが始まる。2019年という年代設定がわかりやすい。榮倉奈々と岡田准一が新人と教官という立場であったり、女子高生の時代に出会った憧れの人であったりする重層的な人物描写が面白い。ガンアクションと格闘技がミックスされ、コメディと恋愛もあるバランスのよい娯楽作品になっている。

小渕恵三氏が新しい年号は「平成」だと告げた記者会見を、「正化」に変えた。それだけで現実味が増している。出版不況はそれほど深刻でないようで、本や雑誌が主要なマスメディアの役目を果たしている。社会統治を円滑にするために、「メディア良化法」という法律が制定されてその実行部隊として”メディア良化隊”が作られる。それに対抗するために、全国の公的図書館が創設したのが防衛組織”図書隊”だ。メディア良化隊が先制攻撃を許されて、図書隊が専守防衛に徹するという設定が自衛隊のようで笑ってしまう。

メディア良化隊は街の本屋にも押しかけてくる。ネット社会になって本屋が次々につぶれているのと似ているけど、少し違うみたいだ。メディア良化と言いながら、出版社にはノータッチというのだから本末転倒かもしれない。まあそこまで言うと、映画が成り立たない。高校時代に本屋で本を奪われそうになって図書隊のメンバーに救われた笠原郁(榮倉奈々)は、図書隊に入る。女性なのに実働部隊志望の笠原は、鬼教官の堂上篤(岡田准一)に厳しく訓練される。

高校時代に救われた思い出の図書隊のメンバーを理想として目指す笠原は、堂上からそのメンバーは図書隊失格だと言われる。その意味がわからないので、笠原は悩み続ける。同期の柴崎麻子(栗山千明)は笠原と仲良しで、年頃の会話が愉快だ。同期でエリート隊員の手塚光(福士蒼汰)や、先輩の小牧(田中圭)らがなかなかの存在感を放っている。雑誌「新世紀」の記者折口マキ(西田尚美)が自由に取材できるのが都合よくできている。

図書隊とメディア良化隊が対戦する際には、お互いに法律の条文を宣言して約束の時間から交戦状態になる。警察は二つの組織の争いには介入しない。激しく二つの組織が争っているのに、国民は全く無関心だ。それはまるで、政治に無関心な無党派層みたいだ。邦画としては銃弾の数が半端ではないし、岡田准一の格闘技も見られる。石坂浩二扮する仁科と笠原郁が誘拐される事件まで起きて、物語の盛り上がりがいい。久しぶりにお勧めの映画に出会った。

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