奇跡のリンゴ

木村秋則さんが可能にした無農薬リンゴの実話をもとに、映画化された物語だ。家族の絆が物語の中心にあり、義父のラバウル従軍体験がしっかりとふせんになっているのに感心した。ジャングルで飢えをしのぐために作った作物が大きく育ったという体験談は、木村秋則氏が無農薬リンゴの成功に直接関係していない。でも、脚本的に考えると自然の生態系の物質循環に注目した点で結びついている。三人の娘たちが父をしっかりと応援する姿は涙を誘い感動した。

1972年に結婚して無農薬リンゴに取り組み出したのだから、並大抵の苦労ではなかったはずだ。リンゴ栽培の農作業稼働月数を6ヶ月として16回の農薬を散布すると、10日に1回の割合になる。そのほかにも肥料を散布するだろうから妻美栄子(菅野美穂)が、体調を崩してもおかしくない。殺菌剤はともかく、殺虫剤を散布するときにはしっかりと防護服(マスクとゴム手袋)を着る必要がある。そこまで詳しい描写はないけど、木村秋則(阿部サダヲ)本人も風呂場でかゆみを感じている。

幼馴染でもある妻と結婚したのだから、農薬をやめる決断はごく自然だったのかもしれない。農薬の代わりになるものをしっかりと実験しながら、栽培を続ける。でも、最初の3ヶ月で虫が大発生して葉を全部食われてしまう。そこからは、試行錯誤の繰り返しになる。義父征治(山崎努)もいっしょになって、手で虫を取る作業を続ける。それはそれは、気の遠くなる作業だ。リンゴが収穫できないので、妻が野菜を作ってコメを買う。なぜか農薬を使わないでも野菜ができたのだから、不思議だ。

トマトなどを育てて売り、現金を得て米を買う。ということは、その野菜作りの環境にヒントがあったのだけど、なかなか気づかない。そもそも、畑の片隅で作っていた野菜と樹木のリンゴとは違う。義父が貯金をおろして生活費にあてるけど、それも底をつく。秋則は村人の中で唯一出稼ぎに出るけど、公園のベンチで寝ていたのでお金の入った荷物を盗まれてしまう。もうここまで来ると、精神的に追い込まれてだんだん孤独になってくる。村の人たちからも白い目で見られて、首をくくろうと岩木山に登る。

縄を投げるけどうまく掛からないで、落ちてしまう。森の中に1本の果樹の木を見つけて、なんでと気がつく。その土地の環境で人間の手が加わっていないけど、立派に育った1本の木。落ち葉がふかふかの土壌を作り、肥沃な栄養源になっていたのだ。そこで、秋則は自分の畑に走って戻り夫を探していた妻と抱き合って喜ぶ。ここが感動的なのだ。長女の「なんで家がこんなに貧乏しているのに途中でやめるなんて言うのか」というセリフもいい。

木村氏のリンゴ園では、土壌に何もしないわけでないそうだ。草を鋤こんだり、自前の生態系循環の手助けはしているらしい。でも、従来型の農業の全部を管理する方法とは違う視点がありそうだ。果樹だから可能になったという点もあるだろう。研究の余地はたくさんあると思う。

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