ゼロ・グラビティ

アルフォンソ・キュアロン監督が、スペースシャトルの船外活動中に危機に陥った二人の宇宙飛行士の行動を3D映像で映画化した。この映画は3Dで見るべき久しぶりの作品だ。まるで宇宙に放り出されたような臨場感と、宇宙からみた地球のすばらしさが圧倒的映像で描かれている。冒頭から一瞬も目を離すことができない緊張感が観客を引きつける。二人の俳優しか出てこないのに、内容の充実ぶりがすごい。会話もいい。傑作です。

スペースシャトルで船外活動をしていたのは数年前の話だ。まして、船外に3名の宇宙飛行士が同時に出ているのはかなり異例のものだろう。1名は作業をしていないで宇宙遊泳だけしている。スペースシャトルと国際宇宙ステーションの活動が重なった時期があったので、ありえない物語ではない。地上600kmの宇宙空間では重力は存在しないで、一度放り出されたらそのまま離れていく。そんな恐怖を最初は感じないけど、一旦予期しないことが起きると冷静な判断が求められる。

初めてのミッションであるライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は、ベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)から指導を受けながら船外活動をしている。緊張気味のストーンに比べて、コワルスキーは時節冗談を交えながら適切なアドバイスをする。コワルスキーのしゃべる内容が後々の物語への布石になっているから聞き逃せない。短い言葉で核心をつくアドバイスがすばらしい。漆黒の闇のと地球の白い雲の間に見える青い海が、恐怖と生還という対比を物語っている。

ロシアが自国の人工衛星を爆破したために、宇宙ゴミが発生する。それがシャトルの方向に向かっているとヒューストンから報告される。宇宙にいる3名にも伝わるが、今ひとつ緊迫感がない。でも、宇宙遊泳をしていた1名が直撃されて、自分たち2名もシャトルに戻れなくなる。絶体絶命の窮地に陥っても、コワルスキーの態度は冷静だ。国際宇宙ステーションまで行き、ソユーズで地球に帰還するか、中国の宇宙ステーションまで行きそこから帰還するか厳しい選択が待っている。

最初は酸素の減少でパニックになったストーンは、コワルスキーの言葉に従って絶対に地球に帰るのだと考え直す。その過程が実に丁寧に描かれている。2度も宇宙ゴミの衝突を受けながら、ステーションを移動するストーンは不死身みたいだ。衛星に着陸用の燃料しかないけど、それを推進力に変えるアイディアを思いつくのは執念としか言えない。コワルスキーの幻影を見るけど、ストーン自身の変容がもたらしたのだろう。地球の大気圏に突入してからも無事に地上まで生きていられるのか、最後まで気を抜くことができない。

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ハッブル望遠鏡の高度は600kmだけど、ISS(国際宇宙ステーション)は400kmであるのでやっぱりちょっとおかしい点もある。中国のステーションの高度は知らない。



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