よみがえりのレシピ

浜松にあるシネマイーラで開催されている「食と環境を考える映画祭」の第二弾となる作品。2011年に公開された作品。山形大学農学部の植物遺伝学の江頭宏昌准教授が行っている研究内容とイタリア料理店「アル・ケッチアーノ」の奥田政行の活動を中心に(山形在来作物研究会)、在来作物を栽培している農業従事者が登場する。在来作物とは明治以前から日本各地で栽培されていた農作物で、生産性の低さや病虫害に弱いなどの理由で一般農家で取り扱っていない。ところが、その在来作物を見直す動きが各地で起きている。

大量消費と経済性の追求という価値観からは外れてしまったけど、細々と一軒の農家によって栽培が続けられてきた作物もあった。山形県は日本海に面しており平野が広がっているけど、凶作の危険も常にある地方だ。そのために稲作だけでなくて、ほかの作物も生産されてきた。お米は領主に収める必要があるので、そのほかの作物がどうしても必要だった。ところが、戦後の経済成長時代に入り国民の食料が大量に必要になる。各県には農業試験場や大学の農学部が作られて、それぞれの気候にあったイネが品種改良で生まれる。

野菜についても、研究機関や種苗会社が新しい品種を生み出していく。農家は都市へ食料を提供することに使命感みたいなものを持っていたと思う。でも、経済成長が鈍化して生活を見直す考えが誰でも思うようになる。その動きは、経済成長ばかりを追い続けてきた我々の生き方を考えなおす機会にもなっている。もう栽培されなくなってしまった作物もあるのだけど、その責任は農業関係者だけでなく、消費者の側にもあるのだと思う。

杉を伐採したあとに、材木を搬出する。切り株が残った斜面に残渣を集めて、焼き畑農業を実践している後継者がいるとは大変に驚いた。その焼き方は炎がだんだん中心に集まって、自然に消えていくという高度な技術がある。焼いたあとにはミネラル分が豊富な土壌が残り、そこでカブを栽培して保存食にする。イネのほかにも、キュウリや大根や枝豆などの在来作物が登場する。それらの作物の味を損なわないように作るレストランの奥田政行さんの姿勢が、非常に共感を呼ぶ。「つけもの処本長」の在来作物を使った商品も食べてみたい。

消えてしまった在来作物の中にはもう全く種もないものがあるかもしれない。でも、独立行政法人農業生物資源研究所では9万点(稲類、麦類、豆類、いも類、雑穀、牧草、果樹、野菜、花卉、茶、桑、熱帯作物)を超える農作物の種などのジーンバンクがある。研究目的なら分けてもらえるらしいので、あまり悲観的にならないで欲しい。栽培側を支えるのは、消費者の嗜好でもあることを忘れてはいけない。



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