ウォルト・ディズニーの約束

『メリー・ポピンズ』の原作者と製作しようとしたウォルト・ディズニーの関わりを描いた映画だ。なんとか映画化したいディズニーと原作の世界を壊したくないトラヴァースが喧々諤々のやりとりを繰り広がる。ディズニーは娘と20年前に映画化を約束したけど、原作者のトラヴァースは父との思い出が詰まった作品を他人の手に委ねたくない。自分が愛していた父は作家になるような想像力を育ててくれたけど、酒飲みで早死して家族に苦労を掛けた存在でもある。その父を愛するがゆえに執筆した原作の秘密をディズニーが理解して、芸術作品に昇華したのだろう。試写会のシーンで涙が止まらない。

1961年『メリー・ポピンズ』の原作者P.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)がイギリスの自宅でマネージャーに説得されている。もうお金がないので、アメリカのウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)からの映画化権の承諾書にサインをして来て欲しいというのだ。トラヴァースは仕方なく、飛行機に乗りロサンジェルスにやってくる。出迎えたのは運転手のラルフ(ポール・ジアマッティ)だ。気むずかしいトラヴァースはディズニー本人にあっても打ち解けようしないし、スタッフが考えた脚本や音楽にことごとく駄目だしをする。

もうアメリカまで来ているのだから、映画化に前向きのはずだけど彼女の中では納得していないのだ。その秘密はトラヴァース本人の幼少期の父との関係にあった。そんなことを知るよしもないウォルトたちは、どうやって彼女のご機嫌を取るが悪戦苦闘する。トラヴァースは父のファーストネームで苗字はゴフといった。1899年8月9日にオーストラリアで長女ギンティ:幼少のトラヴァース(アニー・ローズ・バックリー)は生まれる。銀行家の父は仕事は順調に思われたけど、酒飲みでギンティが8歳のときに亡くなった。もう酒をやめるように医者に言われて療養していたのに、ギンティが捨てられていた酒を持ってきてしまう。父が酒を欲しいと言ったので、父に差し出してしまった。

その行為が父の健康状態にどういう影響を与えるかわからなかったと思う。ギンティは小さい頃から作文が上手で、父に褒められた。母が現実的で厳しい躾を行うのに、父は想像力を育てるように接してくれた。おかげで学校でも作文を褒められる。その子供時代があったから現在作家として自分が生活できている。トラヴァースはそのいい思い出を壊したくない。「メリー・ポピンズ」は風に乗って家庭教師が一家の元にやってきて、楽しいひと時を過ごす物語だ。でも実際の子供時代は全く逆の様相だった。父の健康悪化で一家は荒れた家庭環境になる。その環境を改善するために厳しい指導をする。

ギンティ、のちのトラヴァースは父がいない寂しい生活を楽しい物語に書き換えたのが、「メリー・ポピンズ」だった。一旦契約を解消してロンドンに帰ったけど、ウォルトが一便遅い飛行機で追いかけてくる。そこで二人はお互いを理解しあう。ロスで開かれた完成披露試写会にやってくた彼女が涙を流しながら観るシーンがすばらしい。おそらく自分が要求した以上の出来だったのだろう。1964年に公開された「メリー・ポピンズ」は主演女優賞(ジュリー・アンドリュース)など4部門を獲得する。

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