クローズEXPLODE

高橋ヒロシ原作の不良高校生を主人公にした漫画を映画化したシリーズ第3弾。三池崇史監督小栗旬主演のやつからキャストを一新してストーリーもオリジナルである。やっていることは鈴蘭高校のテッペンを取る殴り合いのお話なんだけど、孤児院育ちだったり父親がいなかったりする生徒の成長物語でもある。殴り合いはあくまでも武器なしの素手でフェアに戦い、大人の地上げ屋の事情はさらりと流している。教師が全く出てこないし勉強している気配もない。女の子もいない。男の子の有り余るエネルギーのぶつかり合いの物語だ。

一応上級生が卒業した新年度、鈴蘭高校の頂点を目指した戦いが始まる。けんかの強さだけを競う争いなので、単純なお話かと思えば少し事情が違う。冒頭で母親が子供を孤児院に連れてくる。「必ず迎えに来る」と言い残して去っていくけど、どうも来た様子はない。高校生になった鏑木旋風雄(東出昌大)が鈴蘭高校に転校してくる。父親はプロボクサーだったけど、試合ですぐに倒れなかったのでそのまま死んでしまった。鏑木は無様に死んでいった父の二の舞いにだけはなりたくないと、喧嘩をしない。

でもやってきた高校では勉強ができたりスポーツが得意でも褒められない。喧嘩偏差値1位の強羅徹(柳楽優弥)、2位の高木哲次(KENZO)など、喧嘩がこの高校生の価値観なのだ。学歴社会の偏差値というわかりやすい数字を使っているので、彼らが何を考えているかわかる。自宅にサンドバックがある鏑木は、体力もあるし度胸もあるし喧嘩も強いのだろう。いくらけしかけられても、喧嘩をしようとしない。弱い犬ほどよく吠えるという言葉があるように、強い人間は能書きを言わない。

一年生の加賀美遼平(早乙女太一)の父は、元暴力団組長で抗争で命を落としている。彼のお守役だった鈴蘭OBの片桐(やべきょうすけ)は組を抜けているが、遼平のことを心配して鈴蘭のある町に戻ってくる。そして、中田あや(浅見れいな)が経営する車屋に雇われる。ところが組の後継者である奈良岡(板尾創路)は、その車屋の敷地を地上げする計画を持っている。警察に目を付けられないように、奈良岡は少年院帰りで黒崎工業出身の藤原一(永山絢斗)を使って嫌がらせを仕掛けてくる。

その矛先が鈴蘭高校に向けられると、鏑木も黙ってみているわけにはいかなくなる。偏差値という言葉を使っているけど、その判定は殴りあって決める。実際にやってみないと、誰が一番なのかわからない。ボコボコに殴られても、一晩するとそんなに怪我をしていないし入院してもいつの間にか出てくる。ものすごく野蛮な映画のように思っていたけど、案外そうではなかった。大人の社会の縮図が、高校生たちの姿に反映されていた。

トラックバックは下記アドレスをコピーアンドペーストしてお使いください。
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/153-f6e9c71f



同じカテゴリー(2014年映画)の記事
海月姫
海月姫(2014-12-30 23:50)

バンクーバーの朝日
バンクーバーの朝日(2014-12-22 21:17)

ゴーン・ガール
ゴーン・ガール(2014-12-12 23:26)

チェイス!
チェイス!(2014-12-09 21:21)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
クローズEXPLODE
    コメント(0)