晴天の霹靂

劇団ひとりの同名小説を自身が、初監督・脚本・助演で映画化した作品だ。売れないマジシャンが人生に絶望して生きる意味を失いつつあった時、突然雷を受けて40年前にタイムスリップする。そこには、生き別れになった父と自分を妊娠した直後の母がいた。いい加減な父と自分を捨てたはずの母が全然違う生き様をしている。長い人生でどうしても希望を持てない時が来る。それでも前向きな気持ちにさせてくれる物語を、笑いと少しの涙で魅せてくれた。短い上映時間にこれだけの物語を展開した劇団ひとりの手腕がすばらしい。

大泉洋がすべてのマジックを吹き替えなしで猛練習の末演じている。撮影も全編ロケで行い、特殊効果もほとんど使っていない。見応えがあるのは40年前の浅草の街並みだろう。それがCGなしで実現したのだから驚いてしまう。自分のようにうつ病になったりすると、特に人生を悲観することが避けられない。そんな病気でないなら、この映画は格好の栄養になると思う。1時間半の物語で元気になれるのだから、感謝したいもんだ。

売れないマジシャンの轟春夫(大泉洋)は後輩に先を越されて、バーの店員として働いている。母親には生まれてすぐに捨てられて、父親とは絶縁状態だ。そんな日々を送る彼に、ホームレスで亡くなったのが父親だったと連絡が来る。父の骨壷を引き取ったら、春夫は天涯孤独な身になり絶望的な気持ちになる。「なんで俺だけこんなについていない人生を送らないといけないのか」と空を仰いだら、雷が頭上に落ちる。目を覚ますと、40年前の同じ地点だった。

街をさまよって浅草までやってくると、芝居小屋や興行小屋が並んでいる通りにたどり着く。そこの雷門ホールの支配人(風間杜夫)に拾われて、若き日の父轟正太郎(劇団ひとり)とその助手の母・花村悦子(柴崎コウ)に出会う。自分が生まれる10ヶ月前の時から、春夫は父とコンビを組んで舞台に出る。マジックの腕は二人共あるし、親子喧嘩のようなしゃべりが笑いを誘いコンビはだんだん売れっ子になっていく。その様子が実に楽しい。自分を身ごもった母のお腹が大きくなる様子も微笑ましい。

でも、母は胎盤剥離状態で入院して危険な状態になってしまう。笹野高史演じる産婦人科医がとてもうまい。父と母が自分を生むために命がけで生きている姿を見て、春夫は父から聞いていた話とぜんぜん違うと驚いてしまう。母は他の男と家族を捨てたと思っていたのに、自分を生むために命と引き換えにしようとしていた。春夫がテレビ番組の最終オーディションで見せるマジックの数々と、その映像に組み込まれる父母の懸命な生き様がすばらしい。映像的なカタルシスを体感できた。

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