渇き。

渇き。2004年初版、深町秋生原作小説の中島哲也監督・共同脚本による映画化されたバイオレンス作品だ。R15+となっているけど、大人でも見るには相当の覚悟が必要な内容だった。スプラッター映画やホラー映画も大丈夫な映画ファンには見応え充分なのだ。疾走した女子高校生がここまでやばい行動に関わっているとは信じられない。でも、大人の世界では実際に起こりえる事象だろう。歯止めが効かない未成年の暴走を父親役の役所広司が追いかけることで、見事に再現している。過去と現在の入り乱れた構成でどこまでが真実なのかわからなくなる。

藤島昭和(役所広司)は妻の不倫相手に暴行したことで、警察を依願退職した元刑事だ。現在は警備会社で働いている。その彼の元に、元妻の桐子(黒沢あすか)から娘の加奈子(小松菜奈)がいなくなったと電話が来る。マンションの部屋に行くと、娘の部屋からは覚せい剤と注射器が出てくる。離婚して数年経過して接していない娘の変わりように、藤島はびっくり仰天する。家庭のことを顧みず、仕事一筋だった藤島には受け入れられないことだった。退職してからは、飲んだくれていた父親が行方不明の娘の捜索を始める。

娘の同級生森下(橋本愛)からは、「本当に娘さんのこと、知ってました」と馬鹿にされる。同級生の遠藤那美(二階堂ふみ)や松永(高杉真宙)というやばい連中とも親しかったとわかる。優等生で勉強ができたけど、精神科にかよっていたこともわかる。高校でのポジションは、裏番長みたいな存在で誰も本当の姿を知っていない。野球部のいじめられっ子だったボク(清水尋也)は、加奈子に声を掛けられて救われる。でも、それは松永たちに声をかけていじめっこたちを暴行したからだった。中学時代の元担任東里恵(中谷美紀)は、それほど変わった中学生ではないと証言する。

元刑事の藤島が娘の足跡を追いかけていくと、次々と暴行事件や殺人事件が起きる。最初に起きたのはコンビニ店員の3人が刺殺される事件だ。手口から女子高校生の犯行ではない。すると、元同僚である刑事・浅井(妻夫木聡)が本当のことを教えてくれと迫ってくる。その接近方法から、警察内部に関わっているものがいるようだ。最初は大人しくファミレスで話を聞いていた藤島に、暴力的な接近をしてくる連中が出てくる。どうやら、娘は暴力団も怒らせることをしでかしたとわかる。

暴力団は継続的に資金を回収する必要があるので、顧客の秘密は絶対に漏らさない。薬物でも女性でも顧客のデータを警察には明かさない。精神科医の辻村(國村準)がいくら警察でもカルテを見せないと拒否するのがふせんになっている。いじめから救われたボクは加奈子の誘いにのって、パーティーに出る。そのパーティーはアルコールも薬物もなんでもありの無法地帯だった。しかも加奈子はパーティーに来た大人の顧客の行為を撮影していた。加奈子は男女の区別もなく、年齢の垣根もない享楽的な欲求を追求していたのだ。その娘の父親も、手段を選ばない。

物語の佳境に入ってくると、見ているのが辛くないかもしれない。ありとあらゆる欲望が渦巻いているからだ。たぶん、今年度の日本映画のベスト3に入る濃い内容だ。生半可な気持ちでは見ないほうがいい。父親が統合失調症であり精神安定剤も飲んでいるので、酒を飲んで正常に行動できない。やっぱり、どこまでが現実かわからない。
トラックバックURL
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/167-99ab744d



同じカテゴリー(2014年映画)の記事
海月姫
海月姫(2014-12-30 23:50)

バンクーバーの朝日
バンクーバーの朝日(2014-12-22 21:17)

ゴーン・ガール
ゴーン・ガール(2014-12-12 23:26)

チェイス!
チェイス!(2014-12-09 21:21)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
渇き。
    コメント(0)