イン・ザ・ヒーロー

評判が良さそうだったので、少し遅れたけど見に行ってきた。「バッチギ!」「フラガール」のプロデューサー李鳳宇が唐沢寿明を主演に迎えて、アクション専門の吹き替え俳優・スーツアクターを主題にした映画だ。特撮ヒーロー物や危険なアクションをする場合のかわりに活躍するのが、スーツアクターだ。映画のクレジットに名前が出るかもしれないけど、顔が出ることはない裏方が主役なのだ。裏方には彼らなりの美学があり、表舞台を歩む俳優とは違う自覚もある。そんな中で夢を持ち続けた男の決死の執念が最後の長回しの殺陣に集約されている。脚本がうまくできていると思った。

この道25年のスーツアクター、本城渉(唐沢寿明)はブルース・リーにあこがれてこの世界に入ったベテランだ。いつか顔出しで映画に出演する夢を追い続けるけど、だんだん身体にガタにくる。彼の場合は首を痛めている。それでも、特撮ヒーローのスーツアクターとして現役で活躍している。アクション専門のグループを作り、そのリーダーとしてまとめている。面白いのは黒谷友香が男性のヒーローの中に入っていて、背の低い寺島進がピンク色の女性ヒーローの中に入っていることだ。おまけにブラジャーをしてパットも入れている。

悪役も含めると、10人位の集団が日々訓練に明け暮れている。特撮ヒーローは子供向けではあるけど、しっかりと身体作りをするし、怪我も日常的におう。だからチームワークが大切だと言っている。そこに、新人俳優の一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)が入り込んでくる。最初は本城がやるはずだった役を奪った存在だけど、社会人としての礼儀もチームワークもわかっていないので世話をするように頼まれてしまう。

生意気な一ノ瀬が実が、幼い弟妹の面倒を見ていることを本城は知る。また一ノ瀬も映画作りの舞台裏の人たちの存在があって、自分がカメラの立てることを徐々に知っていく。その過程を実に丁寧に描いているのが、この脚本のいい点だ。一ノ瀬がアクションのメンバーといっしょに練習をしている場面がいい。それと、面白いのはハリウッドの監督スタンリー・チャン(イ・ジュニク)の作品への頑固なこだわりぶりだ。見せ場のアクションをワイヤーなしCGなしの長回しで撮影するなんて、いまどきの映画では考えられない。映画の撮影現場で怪我人が出れば問題になる時世だ。

その無茶苦茶な要求に俳優が本国に帰ってしまったという理由から、本城に声がかかる。アクション大作「ラストブレイド」のクライマックスシーンに出演できるのだ。無鉄砲だと本人はわかっているけど、引き受けてしまう。妻の凛子(和久井映見)と娘の歩(杉咲花)が撮影現場に駆けつける演出が憎い。炎に包まれながら最後まで戦いぬく見せ場のシーンは、彼の人生そのものだ。吉川晃司の歌う主題歌もぴったりとあっている。最高の盛り上がりに感動してしまった。本城は不死身の男なので、死ぬことはないから安心だ。

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