ドラキュラZERO

プラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」(1897)のモデルとして知られるヴラド3世を主人公にした、ドラキュラ誕生をテーマにした映画だ。串刺し公の名前で有名なヴラド3世は実在した歴史上の人物であるけど、吸血鬼はあくまでも小説の中の存在だ。その歴史上の出来事とドラキュラ誕生を融合してダークなアクション映画になっている。愛するものを守るためとはいえ、太陽の光が当たらない環境で物語が進むので雰囲気は暗い。

現在のルーマニア、トランシルバニア地方は15世紀にはオスマントルコやローマ帝国にはさまさた混乱の地域だった。父王のときにオスマントルコに敗退して、子供のヴラドは人質にされる。そこで、子供たちは兵士として訓練されて戦場に駆り出される。でも、戦場から逃げ出した彼(ルーク・エヴァンス)は母国に帰り着き、国王になって平和に暮らしていた。妻ミレナ(サラ・ガドン)との間に男の子も生まれていた。

そこへ、子供の頃いっしょに暮らしたことがあるメフメト2世(ドミニク・クーパー)が統治するオスマン帝国が、勢力を広げてくる。徐々にワラキア公国に迫り、服従の証拠として子供を1000人差し出せと要求する。ヴラドの一人息子も含めて差し出せという要求に一旦は従う素振りを見せるが、土壇場で反故にする。子供の頃に訓練された戦士としての腕を発揮して、使者を倒してしまった。

そうなると、莫大な兵力を有するオスマン帝国に対抗するには、城を放棄して山奥の修道院に逃げ込むしかなくなる。その撤退中にも、敵の襲撃を受けてどんどん味方が減っていく。国王として家族と民衆を守るために、ヴラドは山の洞穴に住む人の血を吸う怪物と取引をする。3日間人間の血を吸わなければ元の姿に戻れるけど、我慢できなければ吸血鬼になってしまうというものだった。

ヴラドは押し寄せる大群を相手にして、獲得したコウモリのように空を飛ぶ能力や人間離れした治癒力などを使い戦う。最初のうちは相手もその力に恐れて善戦するけど、敵は回りこんで山奥の修道院を襲撃する。妻を助けようと駆けつけるけど、間に合わないで重傷を負わせてしまう。一人息子や国民を救うために、ヴラドは鬼となり助からない妻の首に牙を立てる。その後は、地獄のような絵図が展開されて敵も味方もない状態になってしまう。

ラストで現代のヨーロッパになり、ヴラドらしき男性とミレナとそっくりの女性が巡りあってエンディングになる。多少は明るいラストだけど、全体の雰囲気は暗いものだった。

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