トワイライト ささらさや

加納朋子のベストセラー小説「ささらさや」を映画化した、死者が少しの間この世にとどまる物語だ。大泉洋の夫が交通事故で亡くなり頼りない妻新垣結衣を見守る物語で、他人の身体に乗り移ってしゃべる様子が抜群に面白い。生前しっかりと親の役割を果たせなかった夫が妻と生まれたばかりの赤ん坊の行く末を確認するのだ。心温まるエピソードが満載でさわやかな気持ちで映画館をあとにすることができた。

売れない落語家のユウタロウ(大泉洋)は、一人だけ笑ってくれたお客のサヤ(新垣結衣)と結婚して息子ユウスケが生まれる。これからというときにトラックにひかれて命を落としてしまう。まだ父親として何もしてないユウタロウは成仏できないで、この世にとどまる。妻のサヤは両親を早く亡くして孤独で人がよすぎるので心配だ。自分の葬式に絶縁状態だった父(石橋凌)が現れて、孫を引き取ろうとするのでサヤは困ってしまう。ユウタロウは師匠(小松政夫)の身体を借りて、サヤに逃げろと伝える。

半信半疑ながら、サヤと赤ん坊はローカル線を乗り継いだ小さな町にやってくる。そこはサヤのおばが残した一軒家がある町だった。赤ん坊とサヤだけでやってきて、まず身体を洗うのに困っていると近所の旅館の女将お夏(富司純子)にユウタロウが乗り移り色々と世話を焼く。お夏のしゃべり方や仕草がユウタロウと瓜二つだったので、サヤはほんとうにユウタロウがこの世にとどまっていると信じ始める。そして、隣に住む珠子(藤田弓子)や向かいに住む元教師の久代(波乃久里子)の三人が世話をしてくれる。

同じシングルマザーのエリカ(福島リラ)としゃべることができない息子ダイヤ(寺田心)と知り合い、親しくなる。最初は反目するけど、しゃべることができないダイヤにユウタロウが乗り移ってしゃべる出し、母親の本心を言い当ててしまい状況が変わる。この乗り移りがすごい演技だった。エリカとサヤは同じ境遇同士の友人として理解しあう。なんとか新天地での生活が軌道に乗り出したころに、ユウタロウの父がサヤに連絡してくる。母親としての自覚が出てきたサヤは、ユウタロウが反対するのを聞かないで父と会う。

最初は引き取るつもりだったユウタロウの父は、母としてたくましくなったサヤを見て孫が可愛くなってくる。あまりにも可愛いと思ったので、赤ん坊を連れて逃げ出してしまう。でも熱を出したので病院に連れて行き、サヤは息子を取り戻す。大泉洋のユウタロウが色々な人に乗り移るシーンであまりにも人がガラリと変わり、大泉洋そっくりのしゃべり方をするのでびっくりした。俳優というのはすごいもんだと思った。

母親は赤ん坊と接していれば自然に母性を身につけていくけど、父親はなかなか難しい。成仏できない猶予期間にユウタロウが父親らしくなっていく過程が涙を誘う。脚本の絶妙の間と俳優のすごい演技で、魔法にかかったような時間を過ごすことができた。すばらしい作品だった。

トラックバック URL
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/202-68e2e093



同じカテゴリー(2014年映画)の記事
海月姫
海月姫(2014-12-30 23:50)

バンクーバーの朝日
バンクーバーの朝日(2014-12-22 21:17)

ゴーン・ガール
ゴーン・ガール(2014-12-12 23:26)

チェイス!
チェイス!(2014-12-09 21:21)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
トワイライト ささらさや
    コメント(0)