ALWAYS 三丁目の夕日’64

山崎貴脚本・監督で製作されている「ALWAYS」シリーズ第3弾だ。前作から5年後、昭和39年(1964)の東京を舞台に悲喜こもごものヒューマンドラマが展開される。脚本がうまくできていて、泣かせどころがたっぷりとある。わてはあまり泣けなかったけど、周辺の席の方々はズルズル涙を流していた。映画館で泣いたり笑ったりするのはストレス解消になるので、お勧めだ。大きく泣かせどころは三つあるので、しっかりと物語に入り込んで欲しいものだ。

昭和39年、東京はオリンピック開催を10月に控えてにぎわっていた。夕日町三丁目に住む小説家茶川竜之介(吉岡秀隆)は、妻のヒロミ(小雪)と淳之介(須賀健太)と暮らしている。「冒険少年ブック」に連載を持っているけど、文壇の第一線ではない。お菓子屋をしながら、夜にはヒロミが居酒屋をして家計を助けている。ヒロミのお腹には新しい命が宿っていた。ところが、連載している「銀河少年ミノル」を脅かすように新進の緑沼アキラの「ヴィールス」が人気を獲得していく。

その向かいに住んでいるのは、鈴木オートの一家だ。則文(堤真一)とトモエ(薬師丸ひろ子)は元気で、六子(堀北真希)は一人前になっていた。高校生の息子一平(小清水一輝)はエレキギターに夢中で、新従業員のケンジ(染谷将太)は今ひとつ頼りない。六子は、近所の病院の青年医師菊池孝太郎(森山未来)に恋心を抱いていた。ところが、病院関係者から聴く噂が非常に悪いので大騒ぎになってしまう。

第一のエピソードは、竜之介と父林太郎(米倉斉加年)の関係だ。小説家を目指すと言う竜之介を林太郎は、勘当していた。父危篤の電報が来たのに、竜之介は故郷に帰ろうとしない。父親というのは、息子を独り立ちさせるためにわざと冷たく当たる場合がある。その真意を理解するには、同じ立場にならないとわからないだろう。

第二のエピソードは、鈴木オートの六子と青年医師菊池との仲だ。菊池が女性関係にだらしなく、暴力団とも関係があると噂を聞く。六子はその噂を信じられず、菊池を信じることにする。でも、則文らを納得させるまでに大騒動が起きてしまう。

第三のエピソードは、竜之介と淳之介だ。小説家として新人に追いやられそうになった竜之介は、せめて自分の子供として育ててきた淳之介だけは安定した出世コースを歩んで欲しかった。東京大学に入れる学力がありながら、淳之介は「ヴィールス」の著者緑沼アキラだと判明する。辛い道でも父を超える道を選ぶ淳之介を、須賀健太が好演している。わては、このエピソードに一番共感した。

最後に登場人物のセリフで気になることがあった。六子が結婚後も鈴木オートで働いて欲しいので、トモエが「最近の若い人は夫婦で働くケースが多い」と言う。昭和39年当時に、夫婦共働きが多かったか疑問だ。わても生まれていて、小学校入学前だった。専業主婦が普通だったと思う。また、竜之介が「出世だけが人生ではない」という内容のことを言うシーンも疑問がある。当時は高度経済成長が始まったばかりの頃で、国民全体が豊かになることを目指していたと思う。この2点は、現代風にアレンジしたものだと感じた。



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