キラー・エリート

イギリス陸軍特殊部隊(SAS)に所属した経歴を持つラヌエル・ファインズの同名小説を原作に、ジェイソン・ステイサム、クライヴ・オーエン、ロバート・デ・ニーロの共演で映画化された殺し屋の物語だ。イギリスの植民地だったオマーンが共産主義になり損ねたドファール内戦を背景に、粛清されたゲリラの復讐に雇われた殺し屋が元SASのメンバーを相手に壮絶な戦いを繰り広げる。

詳しく時代まで指定されているので限りなく現実に近い内容になっている。フィクションであるがそれぞれのエピソードは現実だと紹介される。気を抜く暇がないほどのアクションやいわゆる凄腕の殺し屋の実態が次々に描かれる。善悪の区別はなく、大国の利益優先とその犠牲になる名前のない人間という区別しかない。

メキシコでの仕事を最後に殺し屋稼業を引退したダニー(ジェイソン・ステイサム)は、オーストラリアで恋人アン(イヴォンヌ・ストラホフスキー)と暮らしている。そこに師匠であり相棒でもあったハンター(ロバート・デ・ニーロ)が人質になっている写真が届く。ハンターは困難な仕事を失敗して人質になり、代役としてダニーが指名されたのだ。オマーンの内戦でSASに殺された子供の仇を取る仕事を部族長から依頼される。報酬は600万ドルであるが、事故に見せかけて三名を殺すというものだった。

その仕事にはエージェントがついていて、食わせ物だった。1965年から1970年まで続いた内戦は、共産主義の影響を受けたゲリラとイギリスやアラブ各国の援助を受けた政府軍との戦いだ。イギリスのSASが深く関わり、石油利権を守るためにゲリラの殲滅に力を発揮した。当時SASのメンバーを指示した人間は、石油利権の恩恵を受けた。それを手放すことは考えられないので、元SASのスパイク(クライヴ・オーウェン)を送り込む。

ダニーはハンターを後方支援に配置して、デイヴィス(ドミニク・バーセル)やメイヤー(エイデン・ヤング)を相棒にして標的を始末していく。でも、仕事をやり遂げる寸前でスパイクに邪魔をされて、捕らえられてしまう。イスに座らされて手を後ろに縛られても全く諦めないダニーの根性には、ほんとうのプロの姿勢を感じる。そして、生き延びるためにあえて殺さない手段を選択する。

ラストの車だけを襲撃する方法は、復讐を呼ばない賢いものだった。ドキュメンタリーを見ているような緊迫感があった。すごい映画だ。高橋和夫の国際政治ブログ参照。



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