とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver

前作から5年後という設定で、北野武監督がベテラン俳優を豪華に起用して描いたヤクザ社会の抗争劇だ。関東の山王会と関西の花菱会が抗争が繰り広げて、それをたきつける暴力団対策の刑事がからんでいく。下克上の戦国時代のような無秩序な争いをしている中で、筋を通す者は少数だ。自然界の弱肉強食ならそれなりの秩序があるのだけど、人間の欲望が絡んでくると戦争のようになる。いまどきこんなにドンパチやるその筋の方はいない。ビートたけし演じる服役中の大友は半分傍観者みたいなポジションだと感じた。刑事さんは権力者であり、そのほかの登場人物はそれに踊ろされている人々みたいだ。フィクサーという人物が影で筋書きを描いているのが気になった。

関東の山王会会長加藤（三浦友和）は、前会長を裏切って自分で殺して後釜に座った。大友組の金庫番で頭が切れた石原（加瀬亮）を若頭にすえて、古参幹部を軽視していた。いまや政治の世界にまで深く入りこんで勢力拡大を図っていた。これは、年功序列を廃止して成果主義を導入した企業と全く同じだ。セリフは「なんだこのやろう、ばかやろう」と荒っぽいけど、これが口癖なんだ。古参幹部で反感を持っているやつを、暴力団対策の刑事がライバルの関西の三菱会に渡りをつけてたきたてるとは策士である。しっかりと足場を固めないでそんなことをすれば、トップ同士の連絡で簡単につぶされる。

一番悪い奴は、どうも刑事の片岡（小日向文世）に思えてきた。ようは二つの二大勢力をぶつけて弱体化させるのが狙いなんだろう。それにまんまと乗せられて、落とし前という昔堅気の考え方に固執した面々が次々と命を落としていく。ピストルを使っているけど、乾いた音がリアルに聞こえるだけで残酷さは排除されている。音響のいいスクリーンで見ると、「なんだこのやろう」と怒鳴りあっている隣にいるような臨場感が味わえた。