新しい靴を買わなくちゃ

脚本家の北川悦史子が監督をして、中山美穂と向井理主演で作ったパリでのロマンスを描いた映画だ。全編ロケで撮影したようで、背景がすばらしい。坂本龍一が音楽監督として参加しているので、優雅な気持ちになれた。パリにやってきた兄と妹がそれぞれに繰り広げる恋愛模様がお話になっている。妹は絵画留学している彼氏に会う目的があったけど、カメラマンの兄は付き添いで来ただけだ。その兄が向井理で出会うのが中山美穂だ。大人の恋なのにあまりにも純粋すぎて表面的だと感じた。

妹のスズメ(桐谷美玲)と兄のセン(向井理)はパリに3日間の予定で観光に来る。妹の目的を知らなかった兄は、記念写真を撮るとタクシーから降ろされてそのまま置き去りにされる。ホテルが予約してあるのだけど、兄はホテルの名前を知らない。そこへ、偶然パリで暮らしているアオイ(中山美穂)が通りかかる。出来すぎの設定だけどそれはよしとしよう。その出会いでアオイはヒールが折れてしまい、センはパスポートの写真を破かれてしまう。領事館に連れて行ってもらったセンは、そこで別れる。

でも、妹が予約したホテルの名前がわからないで再びアオイに助けを求める。なんとかホテルを見つけてチェックインするけど、食事をアオイといっしょにすることになって意気投合する。もう普通ならここで、お互いに恋愛感情が出てもいいと思う。でもそれができない事情がアオイの方にあった。アオイは日本語のフリーペーパーの編集者であるけど、元は美大を卒業して画廊に就職した。そして、パリの出張所に勤めているときにフランス人とカップルになった。遊び人だった彼と別れたけど、子供ができて産んだ。でも、5歳で子供は亡くなった。

ここまで理解しあうまでに丸二日かけている。なんとももどかしいというか、慎重なのだろう。踏み切れない心の傷もある。一方、妹のスズメは彼氏のカンゴ(綾野剛)との仲をはっきりさせようと決意してパリに来ていた。カンゴはすぐに結婚なんて考えられないと彼女に答えるのだけど、若いスズメには待つ余裕がない。なぜか妹と彼氏の物語の方が劇的に感じる。兄たちの物語が進むにつれて、妹たちの物語もクライマックスを迎える。抑揚の度合いを見ると、妹たちのお話は厳しいものがあった。

ところが、兄たちの物語はセーヌ川のようにゆったりした流れである。パリの主要観光地をめぐっていて、旅行ガイドのような趣さえある。まだるっこいのだけど、背景の景色と音楽がすばらしいのでスクリーンに見とれてしまった。新しい靴を買って出直す物語なので、人生の再出発の意味もある。靴がつぶれることはよくあることで、それはいつ来るかわからない。買いなおす靴は、自分の気に入ったものにしたいもんだ。

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