ハンガー・ゲーム

ちょっと遅くなったけど、全米でヒットした話題作を見てきた。スーザン・コリンズ原作の3部作の第1弾だ。近未来のある国家を舞台に、支配者階級が労働者階級を統治するために少年少女を選抜して殺し合いをさせる物語だ。ジェニファー・ローレンスが主演で妹の代わりに志願して生き残りゲームに参加する。ゲームの規則が変わってしまうなど疑問点もあるのだけど、ドナルド・サザーランド演じる大統領が特権階級を守るためにそのゲームを行っているのが肝だ。抑圧された民衆をうまく搾取するためのシステム維持が、一番の目的だろう。

ゲームに入るまでのカットニス(ジェニファー・ローレンス)やゲイル・ホーソーン(リアム・ヘムズワース)の野山での生き生きとした生活ぶりが、この物語の目指す理想の姿だと思う。自然の中で狩りをして、必要なものだけを食べる。大自然の前では人間の地位は関係ない。カットニスが居住区の境界を簡単にくぐるシーンが、象徴的だ。12の居住区は、その仕事の内容や人種によって別けられている。カットニスがいるのは鉱業が主体で、ルー(アマンドラ・ステンバーグ)がいるのは黒人の居住区だ。

ゲームに入るまでの過程はその後の展開の背景になっているので、よく把握しておく必要がある。カットニスたちの父親は炭鉱の爆発事故で亡くなった。74回目のハンガー・ゲームということは、第二次世界大戦以来の現代社会を想像させる。ゲームの直接の運営者が最後に毒入りの木の実を食べさせられるのは、支配者サイドにも大衆を制御するのが難しいことをうかがわせる。このゲームを大衆が見なくなったら、支配者階級はその地位を保てないのだ。若者たちの会話の中に少し出てくるので、次回作の展開が楽しみになる。

いままでハンガー・ゲームに志願して出場したものはいなかった。それに12歳の妹が選ばれたので、姉のカットニスは志願する。異色の存在であるカットニスには、ゲームの生き残りであるヘイミッチ・アパナシー(ウディ・ハレルソン)が特別に肩入れしたくなる。スタイリストのシナ(レニー・クラヴィッツ)も、勝ち残る秘訣を伝授したりする。司会者のシーザー・フリッカーマン(スタンリー・トゥッチ)は、けばけばな格好していていかにもアメリカのテレビに出演しているみたいだ。

ゲームが始まって、白人同士がグループを作ったり黒人の二人が深い絆を持っているのも効果的な演出だ。12地区から出てきたカットニスをピータ・メラーク(ジョシュ・ハッチャーソン)が秘かに想い続けていたという設定も、今後の展開を面白くさせている。おそらく、次にはカットニスと仲がよかったゲイルが、出場者に選ばれると思う。カットニスが指2本を立てるポーズで、11地区で暴動が起きる。たぶん、今後の展開でキーになる仕草になる。

この作品だけ見ると非常に中途半端だけど、今後の展開では支配者層の崩壊が起きると思う。ドナルド・サザーランドが重厚な存在感を発揮していたので、次回作でも多く出てくるに違いない。マスコミの作られたイメージは、現在の社会にも通じている。

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