のぼうの城

和田竜の同名オリジナル脚本を、犬童一心と樋口真嗣の共同監督で映画化された。忍城(おしじょう)の水攻めを2万の豊臣軍が行ったが落城できなかった史実をもとにわずか500の兵で戦った様子を描いた物語だ。城を囲むように堤防が作られて、水源となる川の堤防を決壊させる。そのシーンが東日本大震災の津波を連想させるとして公開が延期された。でも、水の押し寄せる特殊効果は非常に激しいものだ。兵隊が水に飲まれるシーンはカットされている。何よりも見所は、野村萬斎演じる成田長親(ながちか)の型破りな人物像だ。でくのぼうからとられた「のぼう様」として庶民から慕われていた人物だからこそ、水攻め破りができたと感じた。

豊臣秀吉(市村正親)の備中高松城の水攻めが冒頭描かれている。岡山市高松にあるその城を攻めるのに、秀吉は金子を農民に与えて突貫工事で堤を作らせて城を落とした。その直後に本能寺の変で信長の死を知って毛利氏と和睦して光秀を撃った。高松の戦に参加していた石田光成(上地雄輔)は、武州・忍城の攻撃を任される。周囲を田んぼに囲まれて利根川も近いことから、光成は親方様と同じ戦略で武勲を挙げようと考えてしまう。あまり戦が得意ではない光成が成果をあげようと焦っているみたいに見えた。なにやら身につまされる思いがした。

秀吉は小田原城を攻めるために、箱根湯本まで来ていた。忍城の城主成田氏長(西村雅彦)は秀吉と通じて、北条側を裏切るつもりだった。天和統一まじかな秀吉に逆らうのは得策でなく、自分達が生き延びるための考えだった。城主が小田原城へ援軍に行っている留守を守るのが、成田長親(野村萬斎)だった。領民の中に入って田植えや麦踏を手伝うのが趣味の長親は、武将としての手腕は不明だった。光成の使者が来て、城を明け渡せと言ってきた。その言い方を聞いて、長親は戦うことを選んでしまう。

甲斐姫(榮倉菜々)を秀吉に差し出せと言われたのが気に入らなかったのか、わからない。一旦戦うと決めた以上、500名の家臣たちもやる気になる。領民を加えて3000の兵になった。領民に人気のある長親にみんな付いていくことになる。2万の敵は最初、何箇所かある細い侵入路から攻めて来る。ところがそれは想定内のことで、色々な方法を使って撃退できた。でも、光成が堤を作り始めて状況が変わってくる。城の半分以上が水に浸かってしまうと、だんだんと士気が落ちていく。それを打ち破るために長親は船で敵の前まで漕ぎ出して、歌と踊りを披露する。すると、敵側の兵もいっしょに踊りだしだんだんと情勢が変わり始める。

光成は敵の大将がそんな踊りをしていることに怒り、鉄砲で撃つように命じる。長親は肩を負傷して寝込んでしまう。それが残された者たちの闘志に火をつけてしまった。城に入らなかった農民たちがこっそりと堤を壊して、水が引く。物語の描き方は丁寧で親切だ。でも2時間半くらいの上映時間は長い。特に戦いが終わってからの事後処理の描写が丁寧すぎると思った。それぞれの武将の行く末などまで説明してくれなくても大丈夫ではないか。それを知って満足する人もいるだろう。わてには、余分だと感じた。

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