黄金を抱いて翔べ

高村薫原作の同名小説を、井筒和幸監督が脚本も共同で担当して映画化した。1990年に発表された原作者のこれがデビュー作だという。すでに何冊も読んでいる家族の話では、リアルな人物描写が迫力満点なのだという。携帯電話もネットも普及していないアナログな時代に銀行の地下金庫にある金塊を盗み出すのは並大抵ではない。メンバーの中でプロと言える人物が北の工作員以外全くいない。6名いたメンバーがどんどん減っていくのがリアルすぎる。こんな内容の原作を書いた高村氏の才能には恐ろしい感覚がした。井筒監督の手腕もすばらしい。こんな硬派な小説を書けるのはまるで男性みたいだ。

システムエンジニアが出てくるけど、銀行のATMとかエレベーターの制御とかビル管理などは別々に管理されている。大阪の運送会社で運転手をしている北川浩二(浅野忠信)は大阪に本店のある銀行に侵入して、240億円の金塊を盗み出す計画を立てる。大学の同級生で過激派や犯罪者に武器の調達をしている幸田(妻夫木聡)を誘い、仕事と住みかを用意する。二人だけで実行できるわけがないので、システムエンジニアの野田(桐谷健太)や爆弾のスペシャリストのモモ(チャンミン)をスカウトする。銀行本店の元エレベーター技師として、相談役にジイちゃん(西田敏行)をいれる。また、偶然計画を知ったギャンブル依存症の北川春樹:浩二の弟(溝端淳平)も仲間に入る。

彼らを妨害するメンバーとして、ミナミの賭博場を仕切るキング(青木崇高)・幸田に迫撃砲の調達を頼んだことがある過激派の山岸(田口トモロヲ)。モモが北朝鮮の元工作員で脱藩したことから、本国からの追っ手のほかに彼を売ろうとする勢力も出てくる。リーダーの北川に妻子がいて、そこに幸田たちが出入りしているのも危ないと感じる。ギャンブル依存症の弟は自殺願望があり、強引に救い出したことから賭博場のキングから狙われることになる。

もうこうなると、無事に仕事をやり終えることができるのかやメンバーがどこで減っていくのか、心配になってくる。群馬県高崎の化学工場から運ばれるダイナマイトを強奪する方法も、非常に強引だ。でも、途中で割り込みに怒った兄ちゃんを頭突きで倒す幸田は、傭兵でもやっていたような凄みがある。それぞれの登場人物の背景をしっかりと描きながら、伏せんを配置して物語が進んでいくのは原作と脚本の力だと思う。

扉を2枚爆破して金庫の扉が出てくる。そのタイプが旧式だとわかると、なんと大ハンマーと鉄杭で切り込みを入れてこじ開けるのだ。大胆さと慎重さが混在しているすごいお話だ。ラストで海の上を船が走っているシーンが出てくるけど、金塊は無事に海外に運び出せたのだろうか。韓国に渡り香港経由でさばけたと思うけど、どうなんだろう。すごい映画ができたもんだ。映画賞の何かには入ってくると思う。


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