007 スカイフォール

007シリーズ五十周年記念作品は、これまでの娯楽大作から高尚な芸術作品になっている。人間の知恵と使命感で行われていた諜報活動は、高度なサイバーシステムに役目を奪われた。個人の能力と使命感だけでは、もはや役に立たないと犯罪者が挑戦する。スパイのリストの入ったディスクを奪ったりする手法は、完全に時代遅れだと犯罪組織は嘲笑する。ジェームズ・ボンドでさえ時代遅れだと言われてしまう。

しかし、MI6の責任者M(ジュディ・デンチ)はスパイがその能力だけでなく使命を果たそうとする執念が大切だと見抜いていた。復帰したボンド(ダニエル・クレイグ)を迷うことなく信頼しているのは、精神的強靭さからだ。一つの企業を空売りして潰すのも一つの国の政権を転覆させるのも可能だという。MI6のビルをハッキングしてガス洩れを起こし、爆発させる。

シルヴァ(ハピエル・パルデム)わざと捕まり自分のパソコンを調べさせて、内部からサイバー攻撃する。周到に計画された復讐は、聴聞会の部屋にまで及ぶ。ネットにつながっている以上、逃げ場はない。そこでボンドは、生まれ故郷であるスコットランドの荒野を戦いの場所に選ぶ。中世の環境に誘き寄せて、ガチンコ勝負で決着をつけるのだ。ボンドが生涯孤独になった経緯も描かれ、本当の格好良さを見せてくれた。

冒頭のディスクの争奪戦で使われているオフロードバイクは、どうもBMWだと思う。日本製なら倒立フォークになっているはずだと思った。上海やマカオに舞台を移すと、セヴリン(ペレニス・マーロウ)がボンドの接待をするけど簡単にいなくなってしまった。シルヴァのMに対する復讐の動機がかなり病的だと感じた。憎しみを持って挑んでくる相手を自分の庭に引き込んで戦うのが定法だろう。

これによってジュディ・デンチは引退して、レイフ・ファインズが新しいMになる。ペニーはナオミ・ハリスがなって、次のシリーズに続いて欲しいもんだ。次回はもう少しユーモアやサービスシーンを期待したい。




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