ぶどうのなみだ

「しあわせのパン」の三島有紀子監督が脚本も担当して、大泉洋と再びタッグを組んだワイン作りを題材にした映画だ。北海道というと十勝地方が有名だけど、空知地方もワイン産地として名前が知られていると知った。雪で年間の半分を閉ざされてしまう地域でワインを作るのは並大抵のことではない。この映画に登場する人物の扮装は現代のものではないみたいだけど、時代設定は現代だろう。故郷に戻ってきてワイン造りをゼロから始めた兄といっしょに暮らす弟のそばに、アンモナイト掘りの女性がやってきて展開される物語だ。ぶどう栽培から始めるワイン造りの様子がわかって、楽しい映画だった。

ぶどう栽培からワイン造りを始めて簡単に成功するわけがない。ピノ・ノワールという品種がどういうものか知らないけど、もっと品種の選定に手間暇がかかると思う。アオ(大泉洋)は指揮者として成功したけど、突発性難聴になり北海道の実家に帰ってくる。父親は数年前になくなっており、弟のロク(染谷将太)が麦を栽培している。麦の収穫を手鎌でやっているけど、生計を立てるには現実離れしている。そんな疑問点はおいといて、この映画を鑑賞するとなかなか感動的な内容だった。

ピノ・ノワールという品種は条件がよければ、いいワインができるのだと思う。その前提で観るのがいい。いくら試行錯誤を繰り返しても、土臭いワインしかできない。土臭いワインがどういう味なのか、全くわからない。彼らの畑のそばにキャンピングカーに乗ったエリカ(安藤裕子)がやってくる。そして、畑の近くで穴を掘り始める。アオはなぜそんな場所で穴を掘るのかと抗議するが、「ここはあなた方の土地ではないから関係ない」と突っぱねられる。

アオはさっそく警察に連絡するが、警察のアサヒさん(田口トモロヲ)はエリカに丸め込まれて食べ物をごちそうになる。郵便屋(前野朋哉)も仲間になって、宴会をする。木工屋のりりさん(りりィ)や床屋のミウラ(きたろう)も味のある雰囲気を出している。エリカがやってきたことによって、何も動きがなかった村の人間関係が変化し始める。ワイン造り一辺倒だったアオが、徐々に変化していく。エリカの目的が化石採取だとわかり、大雨の日にシートをかぶせるのをアオが助けに来る。

アオがやっているのは、収穫したぶどうをどのように加工するかという方向だけだった。でも、エリカの言葉を聞いてぶどうの根に着目したことから風向きが変わりだす。エリカも自分を幼いときに捨てた母親と再会して、わだかまりが消えていく。エリカの意味が荒れ地ではなくて、寒い時でも花を咲かせる強い花だとわかるのがいいエピソードだ。植物としてのぶどうの喜ぶことをすれば、品質のいいぶどうができる。映画に出てくる食べ物が全部美味しそうなのもよかった。

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