シェイプ・オブ・ウォーター

ギレルモ・デル・トロ監督がオリジナル脚本で製作した作品だ。米ソの冷戦下アマゾンの奥地から運ばれた半魚人と清掃員として働く口の利けない女性との恋を描いた物語だ。アマゾン奥地の原住民からは神と崇められている存在の半魚人は、もしかすると人間よりも高度な生物なのかもしれない。口の利けない女性も社会生活に支障はなく、当時の社会から受け入れられいないだけだ。これはある種のおとぎ話みたいなのだけど、人間の存在そのものを考えさせてくれた。

1962年、アメリカの政府が運営している極秘研究所でイライザ(サリー・ホーキンス)は清掃係として働いている。耳は聞こえるけど口が利けないので、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)が唯一の友人で何かと助けてくれる。研究所と自宅をバスに乗って往復して、同じアパートに住む画家のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)も何かと助けてくれる。そんなある日、厳重な警戒のもとで謎の生物が運び込まれる。

その生物は水槽に閉じ込められており、研究所の上層部しか接触できないようになっていた。特に軍人のストリックランド((マイケル・シャノン)は電気ショックの棒を持ち歩いており、高圧的で威張り散らしている。そもそも1962年はキューバ危機の真っ最中で、軍部は緊張状態だったと思う。その真っ只中でアマゾンから運んできた半魚人の研究をしていることがパロディーみたいだ。しかも、ストリックランドはなんで半魚人を解剖しようとなどと考えるのだろう。

ストリックランドの棒に血がついていたことを見つけたイライザは、心配して謎の生物に近づく。ゆで卵をあげると食べてくれたのでうれしくなり、交流が始まる。人間社会から疎外されたイライザはすぐにその半魚人に興味を持ち、レコードを持ち込んだりして仲良くなる。それはやがて恋になる。この当たりから二人の物語はファンタジーになっている。しかし、現実の軍人やソ連のスパイはすぐに結果を出さないといけないと焦っている。

なぜ焦っているかというと、キューバ危機だからだ。現実の切羽詰まった情勢と、二人の恋の行方が交錯する。研究所からの脱出劇はハラハラドキドキの展開であった。何しろ犯人探しでは相当のプロが数人の精鋭チームでやったと疑われるからだ。部屋を水浸しにして怒られるシーンもよかった。半魚人が治癒能力に優れており、人間よりも優秀だという面もあった。この映画で威張っている人間は人間らしくなく、虐げられている人間のほうが人間らしいと思った。

ラストシーンの水の中のダンスは最高にクールだと思った。泣けてしまった。星5個。

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