タクシー・ドライバー

2008年10月11日 23時15分
マーティン・スコセッシ34歳、ロバート・デ・ニーロ33歳のときの監督・主演の映画だ。二人のコンビは、「ニューヨーク・ニューヨーク」や「レイジング・ブル」や「キング・オブ・コメディ」などの名作を世に送り出した。本作は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した。1976年公開なのでまだベトナム戦争の余韻が残っている時代に、ベトナム帰りの若者の狂気をここまでリアルに描いたことは驚異的な手腕だと思う。デ・ニーロの演じたトラヴィスという若者は、非常に精悍な目つきを持ち世の中の不条理を告発している。この映画のインパクトは、今見ても衝撃的だ。

1973年5月、海兵隊にいたトラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)はベトナムから帰ったばかりで不眠症に悩んでいた。夜眠れないので彼は、夜勤のタクシードライバーになる。でも彼は常に一人で、職場の仲間と会話しようとか思わなかった。ある日、大統領候補パランタイン上院議員(レオナルド・ハリス)の事務所で働いているベッツィー(シビル・シェパード)を見て、選挙事務所に入っていき知り合いになる。実に強引な方法だが、野生的なアプローチにベッツィーの心をつかむ。

ところが、ベトナムで人殺しを合法的にやってきたトラヴィスには、女性とどうやって付き合うか全くわかっていなかった。自分がいつも暇つぶしに行っていたポルノ映画館に誘ったので、1ヶ月もしないで振られてしまう。それがショックになって、トラヴィスは掃き溜めのような夜の街の雑踏が憎しみの対象となる。スラム街を流していた時、13歳の少女アイリス(ジョディー・フォスター)をタクシーに乗せる。彼女の姿は大人だったが、話を聞いてみると家出をした13歳の少女だとわかる。トラヴィスは、アイリスの稼いだ金をピンはねしているチンピラを憎み始める。

6月に入ると、闇で銃を手に入れる。44マグナム、38口径、コルト25、ワルサーやナイフを900ドルくらいで入手する。そして、射撃練習やトレーニングを始めてなまった体を鍛え始める。さらに、銃弾の頭にナイフで十字の切り目を入れて殺傷力を増加させる。夜買い物に入った食料品店で強盗に出くわし、その犯人をとっさに撃ち殺してしまう。そこから、トラヴィスはパランタイン上院議員の演説会場に向かい、狙おうとする。ところが、SPに目を付けられて逃走し、実行できないで終わる。

興奮状態にあるトラヴィスは、アイリスに付きまとっているチンピラの始末に向かう。そのシーンは、まさに壮絶な描写で戦場のようだ。スコセッシの狙いもそこにあったと思われる。ニューヨークのど真ん中で、人を殺して家出少女を救い出した男性として世間の賞賛を浴びる。一歩間違えれば、大統領候補を殺していたかもしれないのに、偶然が重なりヒーローになる。なんという世の中なのだろう。


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