サマーウォーズ

わては2006年の「時をかける少女」を見ていないが、そのときの監督細田守と脚本の奥寺佐渡子がコンビを組んで作りあげたアニメーション映画だ。近未来のセカンドライフという仮想空間と、長野県上田市の5世代がいっしょに暮らす旧家を舞台にしたSFアドベンチャーいう内容の作品だ。これは、傑作といっていいだろう。ヴァーチャルな世界はインターネット上に作られているが、それが実際の現実社会と結びついたときこの映画のようなテロの可能性は高い。現実世界を古い旧家にして、それに対比する世界に最先端のセカンドライフを設定したので対比が際立っている。

OZ(オズ):セカンドライフの描写をたいへんに奥行きのある立体的で先端的なデザインに統一して、現実世界を現在の世界とほとんど変わらない平面的な描写にした。オズの世界には、人々は一つのキャラクターを持ちアバターという分身として存在している。アバターは人間の姿である必要はなく、好みの動物でもぬいぐるみのような架空のものでもいい。その世界は、ファンタジーのような可愛さを持っている。でも、現実世界と深く結びついていて、アバターを乗っ取られるとその人間の持っている現実世界での権限も取られる。

映画のタッチは、若い人向けで軽妙な語り口だ。高校2年生で物理部の小磯健二(声:神木隆之介)と佐久間敬は、上級生の篠原夏希(声:桜庭ななみ)に夏休みのアルバイトに誘われる。夏希についていくことになった健二は、詳しいことを知らされずに長野県上田市に向かう。彼らは、陣内家という旧家の曽祖母栄(声:富士純子)の誕生日に帰省するのだ。二人は、栄の前で婚約者のふりをするように強制される。気弱な健二は、あこがれの先輩である夏希に逆らえない。20人以上の一族が集まってにぎやかな夕食が終わり、寝付けない健二の携帯に数字だけのメールが届く。

健二は数学オリンピックの日本代表に今一歩でなれなかった実力の持ち主だったので、暗号を解いて返信してしまう。翌朝起きてみると、健二はオズの世界にサイバーテロを起こした犯人としてニュースで放送されてしまう。一族の一人は高校球児で、高校野球の長野県予選を決勝まで勝ち進む。また、90歳の曾祖母栄と花札の勝負をした健二は勝負に負けて、「夏希のことをよろしく頼む」と言われてしまう。

一族の男たちには、自衛隊・水道局・水産業・電器店店主・警察官・内科医・救急隊員・消防隊員・レスキュー隊員など一通りの社会資本関係がそろっている。また、佳主馬(かずま)というパソコンマニアの少年もそろっている。長野県上田市の鎌倉時代から続く旧家というと、真っ先に思いつくのは真田家だ。家康軍を撃退したり、関が原の戦いのときに秀忠をわなにはめて進軍を止めたのは、まさに真田昌幸と幸村の親子だ。

その戦いのことを一人の大叔父が切々とそらんじるが、その歴史的物語がそのままこの映画のストーリーと一致する。一族の中で、敵味方に分かれてしまうのも歴史が物語っている。真田一族の歴史が、そのまま繰り返されたという設定は歴史マニアにも映画マニアにもうれしい。映像も高い質になっているので、非常におもしろい。お勧めだ。ゴロゴロ。



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