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リュック・ベッソンは最近監督をしないでプロデュースに回った方がいいと思っていたけど、それはわての予想通りだった。製作・共同脚本でベッソンは関わっていて、久しぶりに「レオン」や「ニキータ」のような作品が登場した。元CIAの秘密工作員で離婚した妻と暮らしている一人娘のために、引退したブライアン(リーアム・ニーソン)は完全な民間人だから何をしてもいいだろう。究極の存在である彼は最先端のテクノロジーにも通じていて、格闘技や車の運転の腕も一流だ。娘を救うためにこんなスーパーお父さんがいたら、ほんとうに頼もしい。追跡する細部の手がかりを丁寧に描いているので、映画の世界に入り込めた。

映画の冒頭で描かれている導入部は非常に重要で、全体の付箋になっている。CIAの秘密工作員として家族のために働いたブライアン(リーアム・ニーソン)は、めったに家に帰らない夫だと妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)に離婚される。一人娘のキム(マギー・グレイス)の親権もとられて、金持ちの実業家スチュアート(サンダー・バークレイ)が新しい父親になっていた。

会うことはできるが、時間が限られているので有効に使わないといけない。歌手志望の娘のためにカラオケの最新機器をプレゼントに買って、ブライアンは豪邸に入っていく。娘からは喜ばれるが、新しい父の贈り物は乗馬用の馬だった。カラオケセットよりも、馬の方が非常に豪華である。でも、まだ17歳の娘には高価すぎるし、馬を使って遠くに行ってしまう可能性も感じる。

誕生会の会場を追い出された彼は、昔の仲間に誘われて歌手シーラー(ホリー・ヴァランス)のボディーガードをする。ただコンサート会場とホテルの往復の護衛だったが、コンサート終了直後にファンが乱入してくる。そこで混乱が起きて、ボディーガードが手薄になった時点でナイフを持った暴漢が出現する。でも、ブライアンが一撃で相手を取り押さえて歌手を救う。実はこのエピソードが、この映画全体の要約とも言える付箋になっている。

そこから本編が始まるが、実によくできた脚本だと思う。親友アマンダ(ケイティ・キャシディ)とパリに旅行に行きたいと妻と娘が、ブライアンを訪ねてくる。博物館を見て回りたいという目的を告げるが、未成年の女の子二人がヨーロッパに行くのは危険だと最初は反対する。でも、理解のない父だと非難されて翌日条件付で書類にサインをする。

その条件は、父の元に逐一携帯で連絡を入れる。空港まで自分が娘を送るというものだった。ところが、実際に空港まで娘を送ると、娘の旅行かばんからヨーロッパ各地にしるしが入った地図が見つかる。元妻を問い詰めると、人気バンドU2のヨーロッパツアーの追っかけだという。もう、空港まで来てしまったので止めることはできずに娘たちはパリに飛んでしまう。これは、親が馬をプレゼントした結果だろう。

パリのシャルルドゴール空港に到着した娘たち二人は、親切そうな二枚目のピーターという男にタクシーの相乗りを誘われる。まんまと引っかかった二人は、アルバニア系マフィアの人身売買の組織に目を付けられてしまう。豪華アパートの部屋に入った二人は警戒心を無くして、ロックをかけ踊り始める。父からキムに電話が掛かっても、大音量でわからない。キムが少し離れた瞬間、アマンダが二人の男に抱えられて誘拐される。別の部屋からアメリカにいる父に電話したキムは、「できるだけ男たちの特徴を伝えろ」と命令される。

ブライアンはとっさに電話の音声をipodに録音して、アルバニア語を話していることやキムを連れ去った男の特徴を知る。そこから、元CIAの特殊工作員の手腕が発揮される。アルバニアはバルカン半島にある非常に貧しい国で、大国の犠牲になってきた。現在でもコソボ紛争とかがあり、不安定だ。そのためにマフィア組織が発達して、ヨーロッパ全域に移民が広がり組織も強固なものになっている。誰が味方で誰が敵なのか、全くわからない状態が実際の姿だった。それは、まさに映画冒頭のコンサート会場の騒動そのものだ。



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