カムイ外伝

カムイ外伝の中で、「スガルの島」というお話を元に崔洋一監督、宮藤官九朗と崔洋一脚本で映画化された作品だ。原作は白土三平の漫画で、そのスピード感あふれる描写と読者にこびないハードな内容が記憶にある。わては、ビックコミックに連載されていたものを当時愛読していた。特にビックコミックの連載は、大人向けで読み応えがあった。その原作の印象からこの映画を見てしまうと、かなり対象年齢を下げたと考えるしかない。

映画の冒頭でナレーションが入り、17世紀最下層の身分の人たちが苦しい生活を送っていたと紹介される。カムイ(松山ケンイチ)は生き抜くために忍者になる。でも、戦国の世が終わり、政治体制が安定してくると忍者の役割は、不満分子の除去になる。つまり、一揆を起こす百姓や反乱を起こそうとする一団の制圧にかり出される。その忍者の役目に嫌気がさしたカムイは、忍者の集団から抜けて抜忍となる。なぜ抜忍が追われるかというと、そのやってきたことが世間にばれないようにするためだ。

江戸時代17世紀というと、第五代将軍くらいまでの時期に当たる。その時代の農民や漁師は不安定な生活であったが、後半になると政治体制が安定してくる。備中松山というと、岡山県高梁(たかはし)市あたりになる。そこで、実際に水谷(みずのや)家という主君が17世紀後半統治している。実際に映画に登場する主君も水谷軍兵衛(佐藤浩一)なので、原作の白土三平の時代考証の確かさがわかる。

さらに、白土三平の原作にはスピード感があり、余計な会話はない。ただ追われる者と追う者の生死のやり取りと、為政者の犠牲になる庶民の生活が描かれていた。この映画の殺陣シーンには、原作のスピード感と躍動感が宿っている。また、半兵衛(小林薫)が主君の愛馬一白の足を切り落として逃げるシーンやスガル(小雪)が流れ着いたカムイを追っ手だと疑うお話は、大変に迫力ある演出がされている。

そのハードな演出のままで、最後まで統一していれば多分傑作と言われる映画になっていた。120分という上映時間は長いと思うし、渡り衆のエピソードを描きすぎたと思う。アクションシーンのスピード感と非情な演出が生きていたので、残念だと思う。以下、途中までのあらすじを紹介する。

子供の頃の嫌な時代から忍者になり、スガル(小雪)という抜忍を始末しようとしたが逃げられてしまう。それから15年、今カムイも抜忍となり追われる立場になっていた。備中松山の山の中で、そこの殿様の愛馬が殺される事件が起きる。それは、前足を切り落とすという大胆な方法で、侍たちが大勢追ってくる。逃げていた漁師の半兵衛を助けるが、途中で船から突き落とされてしまう。カムイは、浜に流れ着き村人に命を救われる。

その村は半兵衛の村で、15年前のスガルが妻になっていた。スガルはお鹿と呼ばれていて、子供も三人いた。最初は、カムイが追っ手だと警戒するお鹿も、同じ立場だとわかり徐々に警戒心を解く。また、半兵衛の娘サヤカ(大後寿々花)はカムイの冷えた体を体温で生き返らせたので、カムイに好意を持ち始める。ところが、世の中そんなに都合よくできてないという続きがある。

この製作者の方々は、原作の内容に忠実でありたいと思うあまり色々な要素を詰め込みすぎたのだと思う。せめて、100分程度のスピーディーなお話にまとめてくれれば、ハードな忍者映画の実写版が出来上がっただろう。それほど、濃い内容を求めないなら、この映画は娯楽作品としていいと思う。



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