ココ・アヴァン・シャネル

エドモンド・シャルル=ルー著の同名伝記小説を原作に、アンヌ・フォンテーヌ監督・脚本で映画化されたシャネルブランドの創始者ココ・シャネルの有名になる前までを描いた映画だ。シャーリー・マクレーン主演の「ココ・シャネル」はテレビドラマとして放送されたもので、アメリカで映画としては上映されていない。おそらく、フランスではガブリエル・シャネルのデザイナーとしての功績は知れ渡っているので、有名になる前の物語に焦点が当てられたのだと思う。

白と黒が色の基本だと考えていた彼女の原点は、子供の頃過ごした孤児院で修道女たちが着ていた道着だと思う。まさに、白と黒しかない服装で、修道女の格好は全く体を締め付けていない。母親を亡くして、父親に姉のエイドリアンと孤児院に連れられてきたガブリエルは、常に強い個性と自立心を持っていた。他の裕福な子供たちは親が面会に来るが、シャネル姉妹の父は貧しいので一度も面会に来ない。それでも、いつか父親が来てくれると信じているのが印象的だ。

やがて18歳になったガブリエル(オドレイ・トトゥ)は洋裁店の助手として働き、夜はカフェで姉のエイドリアン(マリー・ジラン)と歌を歌い生活していく。非常に貧しい暮らしで、客たちからもらうチップが生活を左右した。ガブリエルは”ココ”という愛称で呼ばれる人気者になり、将校のエティエンヌ・バルサン(ブノワ・ポールヴールド)と出会い気に入られる。ココは、エティエンヌの城に住むようになる。一方、姉のエイドリアンも貴族の愛人になり、近所の城で生活するようになる。

そして、ココは上流階級の暮らしぶりに接するうちに、コルセットでウエストを締め付けた格好の女性たちの姿がこっけいに見えてくる。また、飾り立てられた帽子を「パイを頭に乗せているようだ」と思う。馬に乗るときに男性のようにまたがるのが便利だと思うと、ココはすぐに取り入れてしまう。そんな自由奔放なココの気質は、伝統を重んじるバルサンの考え方と会わなくなっていく。

そんなとき、イギリス人の実業家アーサー・”ボーイ”・カペル(アレッサンドロ・ニヴォラ)に出会う。彼自身も孤児だった経歴を持つボーイは、常に向上心を持ち読書家で、ピアノも弾ける芸術にも理解のある男性だった。奇抜な格好をして周囲を驚かしていたココは、ファッションのセンスがあると周囲に認められていく。そんなココとボーイは、恋に落ちる。

最初はどちらの男性を愛していいかわからないココは、自動車を運転するボーイと小旅行をして結ばれる。帰ってくると、バルサンは嫉妬をして馬をプレゼントする。でも、進歩的な考えのココはボーイを選ぶが、結婚をしないと宣言する。なぜならば、ボーイはイギリスの金持ちの娘と結婚する予定だったからだ。

ココは女優のエミリエンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)と知り合い、彼女の帽子をデザインする。その帽子は評判を呼び、1910年にはボーイの援助でパリのカンボン通りに帽子の専門店を持つまでになる。自分自身の力を信じてやっていく考えを持つようになるが、不慮の事故で愛する人を失ってしまう。でも、ココは自分の信念を曲げないで、「必ず成功する」と思い続ける。

「必ず成功する」と思い始めたのが、どうも古い考え方に固まった上流階級の女性たちを見た直後だったように思う。それは、自分の考え方がいかに合理的で、進歩的か自覚してしたのだろう。まさに、孤児院で子供時代を過ごさなければ、ココ・シャネルは生まれなかったのかもしれない。ラストシーンで次々に出てくるモデルが着ているのは、シャネルの歴史そのものだ。



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この記事へのコメント
こんにちは♪
TBありがとうございました。

シャーリー・マクレーンの方の「ココ・シャネル」もTBしちゃってスミマセン。
同じ題材を扱っていても脚本とか監督によって受けるイメージがとても違うな~と思いました。
Posted by ミチ at 2009年09月25日 23:35
ミチさん、こんにちは。
いいですよ。こちらこそ、ありがとうございます。
わても、両方見たいです。
とら地方では、マクレーンの方はまだ公開されていないのです。ゴロゴロ。
Posted by とらちゃん at 2009年09月26日 13:47
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