私の中のあなた   MY SISTER'S KEEPER

ジョンQ-最後の決断」でも医療問題を扱ったニック・カサヴェテス監督が、ジョディ・ピコーの小説「わたしのなかのあなた」を原作に映画化した作品だ。「きみに読む物語」も大変感動的な映画だったので、これも期待できる。白血病の姉を救うために着床前診断で意図的にこの世に生を受けた少女と、白血病の姉を救おうとする家族の葛藤を描いている。白血病は血液の癌と呼ばれている病気で、骨髄液の型HLAが合致しないと移植ができない。そこで、25%の確立で合致する兄弟姉妹の特性を利用して意図的にsavior sibling(救世主弟妹)が作り出されている。

その医療行為は日本では行われていないが、アメリカやイギリスなどではすでに現実になっている。2000年に最初のsavior siblingが誕生して、もうSFの世界ではなくなっている。わては映画を見ている最中そこまで知らなかったけど、帰宅後ちょっと検索して調べて知った。サラ・フィッツジェラルド(キャメロン・ディアス)とブライアン(ジェイソン・パトリック)の夫婦には、長男ジェシー(エヴァン・エリングリン)と長女ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)の二人の子供がいた。でも、ケイトが2歳のときに白血病であることがわかる。

そこで弁護士をしていたサラと消防士のブライアンは、医者から小声で受精卵診断でドナーとなる子供を作ることを提案される。何個かある受精卵の中から、HLAの合致するものを選び生まれたのがアナ(アビゲイル・プレスリン)だ。アナは出産直後臍帯血を提供して、幼いころから骨髄液移植などを強制的にやらされていた。サラは弁護士をやめてケイトの世話をして、サラの妹のケリー(ヘザー・ウォールクィースト)も同居していた。家族はケイトの病状に一喜一憂しながら、幸せに暮らしていた。

ケイトを助けることで家族が一つになっていると思い込んでいたのは、母親のサラが一番であった。そこで、11歳になったアナは一人で腕利きの弁護士キャンベル・アレグサンダー(アレック・ボルドウィン)の事務所に行き、自分がこれ以上姉のドナーにされないように裁判を起こす。母親はびっくりしてアナをしかりつけるが、父ブライアンは理解を示す。でも、この映画で不思議なのは、姉ケイトと妹アナの仲がそれほど悪くないことだ。

それがこの映画の肝となるエピソードだ。それを具体的に説明するのは、野暮なのでやめておく。それにしても、11歳のアナを演じるアビゲイル・ブレスリンと、ケイトを演じたソフィア・ヴァジリーヴァが好演している。特にソフィアは、頭髪と眉毛を剃って演じている。キャメロン・ディアスも坊主頭になっているが、実際には剃っていない。なお、この映画の題材になっている医療行為を受けられるのは、相当経済的に恵まれていると思う。

わては、この映画を見ながら涙が止まらなかった。長女ケイトと患者友達のテイラー(トーマス・デッカー)との恋も、切ないお話だ。「病気にならなければ君に会えなかった」とテイラーが言うシーンは、非常に感動的だ。語り手を妹のアナにしたのも、この映画の成功の理由だ。もう大人として、実の親に対して裁判を起こすのだ。並大抵の覚悟ではない。

生命の尊厳は誰にでもある。それは、受精卵診断でこの世に生まれてきたアナにも、もう余命の少なくなったケイトにも例外ではない。人間はいつか死ぬものだけど、その命は誰のものなのか深く考えた。自分の命だからといって、自分の好き勝手にできるわけではない。大事な家族の存在や友人の想いも考えないといけない。命を粗末にするのは、絶対にいけない。すばらしい映画なので、是非すべての人にお勧めする。



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