イル・ポスティーノ

海外では1994年公開、日本では96年公開の1950年代のイタリアの小さな島を舞台にした作品だ。アカデミー賞では作品・主演男優・監督など5部門にノミネートされ、音楽賞(ルイス・エンリケス・バカロフ)を受賞した。他にも色々な映画賞を獲得している。ノーベル文学賞受賞者でチリの国民的英雄で詩人のパブロ・ネルーダがイタリア亡命中に滞在した設定で、郵便配達をする若者マリオ(マッシモ・トロイージ)との交流を描いた人間味あふれる傑作だ。NHKBSでアカデミー賞特集で放送されたものを、思い出したように見た。

漁業しか産業がない小さなイタリアの島で、マリオ・ルオッポロ(マッシモ・トロイージ)は戦争が終わったのに無職のままだった。漁師の父からは「早く職に就け」と言われて、町で見つけた張り紙のあった郵便局に入っていく。すると、山の上に住んでいるチリから亡命してきた有名な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)宛てのファンレターを、毎日届ける仕事をすることになる。給料は安いが、チップを少しもらえるかもと少し期待する。

さっそく帽子だけもらい、自分の自転車でパブロ宅まで郵便を届ける。マリオは、チリが南米のどこにあるかとか彼の詩集を読むなどの接点を持とうとする。でも買い物は妻のマチルダ(アンナ・ボナルート)がやるし、配達人は業務以外のことをするなと局長に言われてしまう。すると、パブロの方から比喩とか隠喩という専門用語で話しかけられる。「空が泣いている」というのを「雨が降っている」と表現すればいいと聞き、マリオは詩作に興味を持つ。

自分のお金を手にしたマリオは、町の食堂で働くベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)に一目ぼれする。マリオは気持ちを伝える方法がわからないので、詩を書こうとパブロに相談する。パブロは、「イメージは自然に沸く」と詳しいことを教えてくれない。マリオは自分で懸命に詩を書いて、ベアトリーチェに届ける。彼女の叔母がパブロのところに文句を言いに来るが、恋する二人を止めることはできない。

町の人々やパブロにも祝福されて、大々的に結婚式が開かれる。若い二人が新しい生活を始めると同時に、パブロのチリ本国での逮捕命令が解かれて帰国する。郵便配達の相手がいなくなり、マリオは食堂を手伝う。ところが、全く慣れない仕事でやることは下働きだけしかできない。水道工事が行われることになり、その食事を一手に引き受けるが選挙で情勢が変わってしまう。また、パブロはチリに帰る途中で各国に立ち寄り、自分たちのことを忘れてしまったと思い込む。

自分の居場所がないと感じはじめたマリオに、パブロの秘書から残しておいた荷物を送ってくれと手紙が来る。周囲はなんで本人からの手紙ではないのかと不満を言うが、マリオはパブロが録音の途中で断念した島のいい所を収録するのを再開する。自分がこの島の特徴を言うことができなかったけど、家族を持った今はよくわかるようになっていた。

このシーンが非常に美しい。波の音で、さざなみ・大きい波。岩壁に吹く風や茂みに吹く風の音。父さんの悲しい網の音。教会の鐘の音。島を覆う星空。妻のお腹にいる子供の心臓の音。などを録音する。ところが、その録音されたテープは、パブロのところに届けられない。5年後、パブロとマチルダが島にやってくる。そこには、自分の名前から名づけられたパブリートという男の子とペアトリーチェだけがいた。

荷物を送る前に参加した共産党大会で、マリオは警官隊との衝突に巻き込まれて亡くなっていた。この作品のクランクアップ後に急死したマッシモ・トロイージは、この映画の中に生き続けている。病気を押して決死の覚悟で撮影に臨んだ彼の笑顔は、全く悲痛なところがない。まさに宝物のような映画だ。レンタルでもいいので、是非見て欲しい。



同じカテゴリー(2009年映画)の記事
空気人形
空気人形(2009-12-27 15:52)

アバター、字幕版3D
アバター、字幕版3D(2009-12-24 21:23)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
イル・ポスティーノ
    コメント(0)