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大恐慌時代に実在した強盗を題材にした映画というと、この間見たばかりの「ボニーとクライド・俺たちに明日はない」を思い出してしまう。また、アンチヒーローものの作品としては「イージーライダー」や「明日に向って撃て!」が、どうしても比較の対象になる。例にあげた映画はアメリカン・ニュー・シネマの代表的作品で、映画史に残る名作だ。それらと比較しては気の毒だけど、1933年から一年間アメリカで暴れまわった伝説的銀行強盗ジョン・デリンジャーが題材なのだから仕方ない。

マイケル・マン監督・製作・脚本で、ジョニー・デップを主演にしたのだ。どうしても期待して見る。衣装も使用されている車も見事に再現された。デリンジャー役のジョニーデップは、すばらしい演技をしている。ところが、物語の主軸がはっきりとしない。

恐慌で職がなく銀行強盗しかやることがなかったのか、銀行家たちだけが富を独占していたのか、デリンジャーの恋人になるビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)との過酷な運命やマフィアから見捨てられた犯罪者の悲哀を描きたいのか、はっきりとしない。というのは、それらの要素が全部含まれているから困ってしまう。

1924年から72年まで8代の大統領に仕えた連邦捜査局のフーバー長官(ビリー・クラダップ)が、大変若いのが興味深い。FBIの組織が確立する前の出来事で、デリンジャーの犯罪が州を越えたので法律が改正された。わては、最初隠れ家や武器を提供していたマフィアがデリンジャーたちに見切りをつけるエピソードに感慨を覚えた。そういう観点からこの映画が作られていたら、時代にあった内容になっていたと思う。

さて、ジョン・デリンジャーは1903年6月22日に生まれて、1934年7月22日クラーク・ゲーブルの「男の世界(マンハッタン・メロドラマ)」という映画を見たあと射殺された。映画は、インディアナ州ミシガン刑務所にデリンジャーがやってくるシーンから始まる。彼は刑務所内にいる仲間を脱獄させるために来る。仲間を救い出したデリンジャーたちは、銀行強盗を繰り返していく。仲間を見捨てないことや銀行の金だけを奪うことから、民衆に受けるようになる。

また、ホテルの衣装係りをしていたビリー・フレシェットを強引にくどいて自分の女にしてしまう。その口説き方が実に格好いい。何度か刑務所に入ったり、警察に捕まるが脱獄もする。女性保安官のリリアン・ホリー(リリー・テイラー)のV-8フォードを失敬するシーンは、迫力満点だ。捜査官メルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)のしつこさも、なかなかいい。

デリンジャーたちは、30代前半という若い年齢で収監されたり射殺された。色々と見ごたえのあるシーンが多いので、少し工夫してほしかった。映画をいっしょに見た女性二人が、なんでデリンジャーと知り合ったのかわてにはわからなかった。アメリカに住んでいる方なら、周知のことかもしれないが。ゴロゴロ。



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