僕と妻の1778の物語

SF作家・眉村卓の同名エッセイを原作に、草彅剛と竹内結子を主演にした夫婦の愛を描いた作品だ。監督は星譲で、ファンタジー溢れる映像がおもしろい。モデルは眉村卓氏と2002年に亡くなった悦子夫人で、高校の同級生なので当時の年齢は68歳だ。映画では主演二人の年齢に合わせたのか、32歳ということになっている。わては父を夫人と同じ病気で亡くしたばかりなのであまり気が進まなかったけど、かなり評判がいいので見ることにした。命あるものはいつか土に返るもので、例外はない。この映画を見て、いつまでも悲しんでいてはいけないのだと前向きな気持ちになれた。

高校一年生のとき、はじめてデートをした朔太郎(草彅剛)と節子(竹内結子)は32歳になっていた。SF小説家になった朔太郎はベストセラー作家ではないけど、一軒家に夫婦二人で暮らしていけるまでになっている。ある日、腹痛におめでたかと思って病院に行った節子は、盲腸の疑いで緊急手術を行う。病院からの電話で駆けつけた朔太郎に待っていたのは、医者(大杉連)からの大腸がんの宣告だった。一番大きな腫瘍は切除したけど、細かく転移したガンは薬物療法で治療していくことになる。

医者には「1年先のことはわからない」と言われる。「笑うことで免疫力が上がる」とも付け加えられる。それを聞いた朔太郎は、妻のために毎日一編の短編小説を書こうと決める。最初はエッセイだと言われるけど、徐々に妻を笑わせることに成功する。夫が作家だからできることではあるけど、家族が前向きに生きていこうとする姿勢に驚かされる。わての場合は、父のために何かしようという気持ちになれなかった。ただ、病気であるとないに関わらず以前と同じように接しただけだ。

朔太郎の場合は妻が一番最初の読者であり、病気になる前から書き上げた原稿を読んでもらっていたという設定が効いている。その作業を毎日続けて、しっかりと連載原稿も書いている。作家とは、全く稀有な能力の持ち主だ。最初1年だと言われていても、2年3年と朔太郎の作業が続く。古いロボットが新型ロボットと戦う話や、新聞屋の集金が火星人だという話には笑ってしまう。

病人である節子も健康な朔太郎も、お互いの存在が生きる支えになっていることに気がついていく。その過程が実に丁寧に描かれているので、わてはうれしい気分になってきた。節子は自分がいなくなって、夫が一人で生きていけるか心配する。北海道に旅行するために、二人が苦心するエピソードが心温まる。自分も誰かに支えられて、誰かを支えているのだとあらためて思った。



同じカテゴリー(2011年映画)の記事
トロン:レガシー
トロン:レガシー(2018-10-16 14:01)

リアル・スティール
リアル・スティール(2011-12-12 00:13)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
僕と妻の1778の物語
    コメント(0)