太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男

太平洋戦争の激戦地となったサイパン島で、バンザイ攻撃後も自分の部下を率いて戦った大場栄大尉を描いた映画だ。原作はドン・ジョーンズの『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』で、大場栄氏の家族も協力している。主演は竹野内豊で監督は平山秀幸だ。イーストウッドの「硫黄島」シリーズ2作もすばらしい戦争映画だったけど、日本の製作でここまでの戦争映画が出来たことを賞賛したい。大場大尉らが最後に誇り高く行進するシーンは、涙が止まらないほど感動した。

ちなみに大場氏は復員後愛知県蒲郡市で会社を経営するかたわら、市議会議員もつとめて平成4年に亡くなった。この映画が製作可能になったのはご本人が故人となったからかもしれない。まだ出兵した方々が存命なので、彼のような行動が全面的に賞賛されるとは限らない雰囲気がまだある。それは戦艦大和を題材にした映画でも垣間見ることができる。日本語ができるハーマン・ルイス大尉(ショーン・マッゴーワン)が、日本人の考え方を上官に説明する。その説明は将棋の駒を使っている。わては、その説明ではいまひとつ上官の理解を得られていないと思う。

サイパンでのアメリカ軍は日本人収容所を2年くらい運営して、日本人の考え方について研究している。米軍に対する日本人の考え方は、どうして「鬼畜米英」になったのか。民間人がどうして捕虜になるよりも、自害することを選ぶのか。旧日本軍の兵士を投降させるには、どういう方法が望ましいのかなどを研究している。でも、沖縄戦の悲劇や新型爆弾(原爆)投下まで起こってしまった。この映画ではもしかすると、沖縄や本土で起きた悲劇を回避する唯一の方法を示したと思う。それは、歴史的結果論からみると不可能だったと言わざるをえない。

サイパンの旧日本軍の将校たちが自刃したあと、無謀な総攻撃が行われる。その攻撃で生き残った大場大尉ら47人は、それまでに経験したことがない事態に遭遇する。サイパンにいる部隊は大本営から見捨てられた存在で、現地の人々はそれ自体を知らない。B29が続々と飛び立って本土を空襲しているなど、思いもしない。大場大尉らは、刺青を入れた堀内一等兵(唐沢寿明)たちの集団と合流してゲリラ戦でアメリカ軍と戦う道を選ぶ。

この映画で一番見て欲しいのは、大場大尉の心の変化だ。アメリカ軍を一人でも多く殺すことを目的にしていたけど、タッポーチョ山に隠れていた民間人を引き連れていくことになる。大勢の民間人を守りきれないと判断すると、収容所に行かせる。さらに収容所の日本人を使って軍人を投降するように説得させる。これが簡単にできるわけもなく、犠牲者が出てしまう。大場大尉は焼け野原になった東京の写真を見て、信じられない。至極当然の考え方だけど、大場大尉は実に沈着冷静だ。

降伏や投降はできないが、上官の命令なら戦闘を停止することができるという。それは、日本人としての誇りを失わず部下や自分も納得して日本に帰る唯一の方法だった。1945年12月1日に生き残った大場大尉たちが、軍歌を歌いながらアメリカ軍の基地まで行進する。この姿を見ると、我々は日本人としての誇りを今一度強く持っていたいと強く感じた。




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